この胸の高鳴りを

兼穂しい

第1話

電車の座席でスマホに夢中になりすぎて、隣に座ってきた乗客の様子にまったく気づいていなかった。


なんと魅惑的な太腿か。


まるで触ってくれと言わんばかりのムチムチした生足。


神は時々、このような粋な計らいをしてくださる。


空席が目立つ車両の中、よくぞこの乗客を隣に遣わしてくれた。


神様グッジョブ!


スマホを眺めるフリで視線を悟られぬよう太腿をチラ見し続ける。


イヤホンから流れる原田〇世の「ロマンス」が心地良い。


触れたい。


撫でたい。


頬ずりしたい。


意を決してさりげなく太腿から足のつけ根までガン見する。


生足と思い込んでいたソレはピッチピチのベージュのチノパンだった。


困惑しつつも勇気を振り絞って履き主の御尊顔を拝する。


薄汚いヒゲ面のオッサンだった。


鳴り止め「ロマンス」。



~ Fin ~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

この胸の高鳴りを 兼穂しい @KanehoShii

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ