第二話

杉浦とLINEを交換してから三週間が経った。

あのよろしくから会話はない。

する会話もないし、これで話が終結するならそれでいい。

ポコン。

スマホを見ると、Yukiの横に❶と書かれていた。

『今週の日曜空いてる?』

休日の予定など、あるわけがない。

『空いてます。』

『おけ。駅に10時集合で。私の買い物に付き合って』

はあ。

女子との買い物にウキウキしない俺は、おかしいのだろうか。


日曜10時。適当に黒いコートを着て、駅で杉浦を待った。

「ごめん、お待たせ。」

杉浦はピンクのニットに黒いもふもふの上着を羽織っていた。今時のファッションなのだろうか。

「いや、別に」

杉浦は俺を上から下まで見た。

「何」

「いや、意外とオシャレだなって思っただけ」

何だそれは。

そそくさと歩き出す杉浦の後ろをついて行った。

「...アニメイト?」

「うん。アンタの店、品薄だね」

俺の店じゃないけどなと心の中で毒づき、初めてアニメイトに踏み入った。

「こういうのを読んでるのか」

「うん。私、激しいのは嫌いなんだよね。でもお酒入ってるのは好きかな。」

杉浦は棚を眺めて、ある本の前で止まった。

「あった。これ。この作者さんが好きなんだよね。」

覗き込むと、そこには高校生くらいの男子が男子をお姫様抱っこしている絵が表紙になった漫画だった。

「ふうん」

「私は買ってくるけど、アンタは?」

「俺はいい。」

レジに向かった杉浦を横目に、俺はアニメイト内を散策した。

アニメグッズやゲームグッズ、いろんな種類の漫画が所狭しと並んでいて少し感動した。

「買ってきたっ。とりあえずご飯にしよ、マックでいい?」

何でも良かったので頷いた。

マクドナルドに入り、店員に注文をした。

「ダブルチーズハンバーガーにポテトM、飲み物は爽健美茶でお願いします。アンタは?」

「...ナゲット5ピースとコーヒーで」

「はい、えーお支払い方法は」

「現金で。払うよ、めんどくさいでしょ。割り勘すんの」

俺はトレーの上に2000円を置いた。

「はい、こちらお釣りになります。番号が呼ばれるまでお待ちください。」

レジから離れ、番号が呼ばれるまで待った。

「ありがとう。」

「いや、別に」

少しして番号が呼ばれたので、ハンバーガーなどが乗ったトレーと一緒に2階へ上がった。

「...アンタ、コーヒーとか飲むんだ。」

「全然飲むけど。ていうか、そんな食うんだな。てっきり飲み物だけとかそんな感じなのかと思った。」

「あー、人による。明らかにこっちに好意持ってる人とか、女子の前とかじゃやらない。」

じゃあ俺は好意が無いと思ってんだなと少し安心した。

「女子の前でもやんないんだ。」

「うん。みんなには私がイマドキ女子の神みたいに思われてるから、イメージ壊さない方がいいでしょと思って」

「思ったより女子って大変なんだな」

俺はコーヒーを口に含んだ。

「俺はそのままの方がいいと思うけどね」

「はっ!?」

「だってそんないつも気張るの疲れるんじゃ無いの?大変そうだし。」

「...」

杉浦は残念なものを見るようにこちらを見ていた。

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