愛しい君へ

たんぜべ なた。

第1話 晴天の霹靂

 拝啓 多田 舞さん   2月14日


 やあ!元気にやっているかい?

 久しぶりに思うところがあったので手紙を書いているよ。

 今年は暖冬と言われていたにもかかわらず、先週は大雪の影響でテンヤワンヤのお祭りになってしまったよ。

 電車やバスが止まってしまう始末で、通勤はおろか、買い物にも出かけられず、一日中引き篭もってしまったよ。

 まぁ、連日の残業、休日出勤で疲弊していたのだから、良い骨休めになったよ。


如月きさらぎ二月というのは、春の到来は今しばらく待たねばならず、いつ冬本番になってもおかしくない時季なのだろうね。

 そう言えば、君の住んでいる所は常春とこはるの街…暑がりで寒がりのマイにとっては、居心地の良い所だったね。


 おっと、手紙の趣旨を忘れるところだった。


 実は、バレンタインデーにチョコレートを貰ってしまったんだよ。

 ああ、最寄り駅の改札口でね。

 見覚えのない女子高生『クリス』さんという方からなんだけど…。


 たぶん、嫉妬深い君なら怒ると思うのだけれどぉ。

 相手は高校生だからね?

 年齢差だって一周りあるんだからね?

 異性と言うより娘ですよ!む・す・め!

 ね、分かってくれるよね?


 そうだねぇ、年齢で言えば君のほうが彼女たちに近いかな?


 そうそう、貰ったチョコレートはA4ノート程の大きさで、個性的なラッピングで飾られていたよ。

 中身は頬が落ちそうなほど、とぉ~っても甘々なミルクチョコレートだったよ。

 そうだね、ブラックコーヒーでようやく釣り合う甘さだったね。


 思えば君からバレンタインデーのチョコレートを貰わなくなって、久しいね。

 まぁ、だったという事で、僕がチョコレートケーキを持って行く機会のほうが増えてしまっただけなんだけどね。


 エンジのスクールブレザー、首に巻かれた紺色のマフラー、チェックのミニスカートが寒々しい女子高生…。

 見覚えのない顔の女の子だったけど…昔の君をふと想い出す…そんな雰囲気の娘だったよ。


 ははは、久しぶりに君との誕生日バレンタインデーを楽しみたくなってしまったよ。


 さて、要件は語り終わったので、この手紙はここまでとするよ。

 気が向いたら、また手紙を書くよ。


 愛しい君へ

 変わらぬ想いと共に


 大輔

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