あこがれの自由!【KAC20252】【あこがれ】【900文字】

Minc@Lv50の異世界転生🐎

飛行機の中からこんにちは

  座席に身体を沈める。安い飛行機なのでそんなにクッション性はなく、自分の体の肉をリアルに感じる。隣の人とも体温を感じるくらいに狭い。


 CAだって笑顔なんてほとんど見せずにツンケンとただある仕事をこなしているだけだ。CA同士で楽しく話をしているのが客席まで丸聞こえだ。きっと今までだったら舌打ちをするくらいイラついていたかもしれない。


 それでも今回はまったく嫌な気持ちを抱いていない。これが心のゆとりかと自分で関心しているくらいだ。


 何よりも解放感だ。今は両隣に人が座っていて物理的に解放感とは真逆ではあるが、そうじゃない。心の問題だ。


 つい先日まで毎日毎日、仕事と家の往復だった。夜は終電ぎりぎりに帰宅。倒れるように布団に入り、朝は朝で満員電車に1時間近く詰め込まれていた。満員電車から吐き出されるように解放されてヘロヘロになって出社したって誰も褒めてくれない。


 残業手当なんてまともに付かない。ただ自分が摩耗していく毎日だ。


 ついに一番仲良くしていた先輩が転職し、後輩がこの前ついに退職代行なる物を使って退社した時には、自分が泥船に取り残されているという事に気が付いたがどうする事もできずに余計に自分に回ってくる仕事に追われ、自分を磨耗する日々を繰り返すしか無かった…


 そんな中、転職した先輩からメールが来た。先輩は今はマレーシアで仕事をしているらしい。最近はマレーシアで老後を送る人が増え、電話で相談に乗る仕事で職場の上に寮があり満員電車なんて無縁の生活なんだそうだ。お前もどうだ?と。そのメールには青い海と広がる日本では見ない碧い空が映っていた。憧れの海外生活だ!俺はにべもなく飛びついた。


 あの退職を告げた時の部長の粟を食ったような顔!思い出すたびにスカッとする。さまぁみろだ!


 到着するとむわっと暑い空気、眩しい太陽が出迎えてくれ自由を実感する。先輩が数人の男性と迎えに来てくれていた。








 今日も受話器を片手に仕事をしている。確かに満員電車からは解放された。

 が、逆に退勤なんてものはない。パスポートは先輩と一緒に来たボスが管理をしている。









「あ、ばぁちゃん?俺だけど」


 不法滞在に詐欺電話。もう日本へは帰れないだろう。



 


 

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