第3話 登場!7体合身ミンケイバー7Y、の3

ヒュン、と軽やかに1号機が地下施設から飛び出して行く。発進を報せる黄色い回転灯の乱暴なコメントが鳴るより早く、機体は曇天の空を貫く。


 「――毎度思うが、1号機だけズルくないか⁈俺たちのマシンはあんなすぐに飛べないのによ!」大地駆が叫ぶ。


 「その事については、激しく同意する。が、それが1号機の特権であることも理解出来ている」と、太平洋。


 「ちっ、仕方ねえ。俺たちも行くか!太平も遅れるな」


 ラジャー!了解!


 幅広の2-3号機を器用にバックで方向転換させると、大地は無人の広道を全速で疾駆する。


 「行くぜ!イカロス!太陽に向かって飛べぇ〜!」


 滑走路と化した公道を、その図体に似合わない速度でしばらく走ると、ジェット噴射も手伝って2-3号機が宙に浮く。


 「――イカロスは太陽に向かって飛んだらダメだろうによ」


 太平がやれやれと首を振る。そもそもその機体はそんな名前ではない。たしか、ええと。まあ良い。取り直して太平が4-5号機のアクセルを強く踏む。大地を追するように機体が飛ぶ。後には凄まじい轟音と風で巻きあげられた砂埃が残響とともに残された。


 町田市立つくし中学校。二人の少女が空を見上げている。


 頭上を飛行機雲が三条、東へ向かって伸びていく。


 「――あ、あれウチのマシンだよね。あーあ、大地は相変わらず運転荒いよねえ。雲が一人だけヨレるんだよね、いつも」


 「馳くんはマシンに乗ると人格変わるから。主人公っぽいキャラ向きなのに、残念だよね」


 「名前もね。二番手か三番手なんだよねえ。やっぱり一番手張るには鳥とか空とか赤とかじゃないと」


 二人同時に「わかるわかる」と小さく頷く。


 かろうじて残っている商店街の方から白いライトバンが二人に近づいて来たのが見えた。窓から半分体を乗り出して、こちらに手を振っている。


 「あーあ。あんなことしなくても見えてるっての。おじいちゃん無駄に目立つんだから恥ずかしいのよねえ。まあ、仕方ない、行くよ、左京。お仕事お仕事」


 「そうだね右京。お仕事お仕事」


 二人揃いの黒く長い髪が、歩幅にあわせてひらひら風に揺れる。

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