優しい力の使い方 ~天才暗殺者でも勇者になれますか~
糸雫撚葉
プロローグ
目を覚ましたらギルドが壊滅していた。
「……るか?」
具体的には見慣れた風景は跡形もなく、滅茶苦茶になった洞窟内のそこら中で人が死んでいた。床も壁も抉れ、もはや誰のものかも分からない血で真っ赤に染まっている。
「……えるか?」
だから声が聞こえるのはきっと気のせいだ。こんな地獄絵図の中、僕の他に生きた人間がいるとは思えない。
「おい!誰か!」
だけど声は徐々に近づいてくる。この声の主がみんなを殺したのかと思ったが、理性が即座にそれを否定した。
だって聞こえてきた言葉からは全く敵意を感じなくて、声からは純粋な心配の気持ちが聞き取れたから。
「生きてるかっ!?」
次の瞬間、視界の奥の曲がり角から姿を現したのは汗まみれの青年だった。走り回っていたのか息を切らしている。青年は僕を視界に捉えたようで、息つく間もなくこちらへ駆けてきた。その瞳は生存者を見つけた喜びで輝いている。彼が根っからの善人なのだろうと感じさせる、とても眩しい光だった。
「はぁ、はぁ……。ここで、何があった?」
目の前までやってきた青年が、乱れた息を整えながら僕に問いかける。何があったかと聞かれても、僕は寝てただけで。もちろんそれを彼が知るよしもないんだけど。
「……僕が聞きたい」
口をついて出た言葉は、自分でも驚くほど冷えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます