第5話 初めての顔合わせ



「ありがとうございました。失礼します。」


 少し待っていたら一人の女性が部屋から退出してきた。その人はみるからにさらさらそうな黒髪ロングである。とても美しい。


「あれ、みやこさんじゃないですか。どうしたんですか?…その隣の方は…?」

「千暁ちゃん、紹介するわね。この子は天音そらちゃん。あなたのパートナーとなる子よ!」

「こんにちは。天音そらです。これからよろしくお願いします。」


 もう一人の一期生である千暁さんは、状況が理解出来ていないのかポカンとしていた。急に言われてもすぐには理解できないのは仕方ないだろう。パートナー、というのが紛らわしい言い方である。マネージャーの可能性もあるし、そんなにすぐに答えて間違うのはそれはそれで恥ずかしい。まだ私たちのマネージャーは決まってないから、私ならマネージャーと判断したと思う。


「あぁ!なるほど!私と同じ1期生になるもう1人の方ですね。山薙千暁です。よろしくお願いします。」


 やっと状況を理解出来たようで、自己紹介をしてくれた。マネージャーと間違わなかったのはすごいと思う。山薙千暁…。素敵な名前である。この子と私はこれから仕事のパートナーとして一緒に活動していくのだ。


「あ、ちあきちゃん、ちあきちゃんはVTuber名決まったかしら?」

「あ、はい!決まりましたよ!紅生 ちあやです!」

「いい名前ね。そらちゃんは…なんだっけ?」

「私ですか?私は天穹しのです。」

「素敵な名前ですね!天と穹があることで、とにかく上を目指す、みたいな感じがあってすごくいいと思います!」


 そこまで詳しく考えた訳では無いが、そういう風に捉えてくれた方がありがたい。いやすごいいい子だな。相手の良さを褒めるのが得意なようだ。これが素ならほんとにすごい。流石に素でやってると思うが。顔も可愛くて素の性格も可愛いとか神じゃん。キャラ悪魔だけど神じゃん。私とキャラ交換した方がいいんじゃないの?この子のためなら私悪魔にもなりますよ?


 そんなこんなで色々と会話したあと、連絡先を交換し、今度オフで話すという約束までした。こんなかわいい子と一緒に仕事できるというので、私はすごくルンルンである。いや、こんなにテンションが上がらない人は居ないだろう。逆にテンションが上がらない方が失礼であると思う。(私は何を言ってるのだろうか)


 家に帰ると、やっと明日は仕事を辞めに行ける日だということに気づく。そう、毎日のように決めなければいけないことがあって仕事場に行けてなかったのだ。つまり、まだ私は辞めてないことになる。電話で連絡すらしてないので無断欠勤である。


「無断欠勤ってことだから、絶対怒られるだろうなぁ…。不在着信の量えぐかったし…。」


 実のところ、マナーモードにしてたので電話がかかってきてたのは知らないが、後で確認したらすごい数の不在着信が入っていた。ざっと百件ほど。私に恨みでもあるのか、というくらいだ。いや、まあね?普通にこき使ってた部下が急に無断欠勤し始めたら困りますよね。私にさせていた仕事を自分でしなければいけなくなって忙しくなるし、パワハラとかで訴えられる可能性まである訳で。怖くて怖くて電話しまくってたらあの不在着信の量になるのだろう。さすがにパワハラで訴えるとかはしないが、したいと思ってた時はあるし今したとしても私には関係ない。これはもう昔の出来事となるのだ。それよりあんなにこき使っていた部下が辞めるとなったらどんな顔をするだろうか?

(ꐦ ᐙ )?( ߹ㅁ߹)?⸜(*ˊᗜˋ*)⸝?予想はもちろん…(ꐦ ᐙ )だ。いや怒ってる姿がみたいわけじゃない。普通にあの人ならやりそうだからだ。



 全ては明日決まる。明日が勝負のときだ。



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