見果てぬ夢の果て

4700万年程前、とある子バクが夢を見ました。
「あーあ、オラのこの毛がトンガってたらモテるのにな……」

そして子バクは念じます。
「オラぁ大きくなったら、立派な角のあるバクになりてぇ」

周囲の大人たちは、口々に言います「アイツはもうダメだ」「夢の食べ過ぎで、おかしくなっちまった」「バカ言ってないで働きなァ!」と。

しかし子バクはあきらめません。
「どうしてわかってくれないだ!? 角があればカッコイイだよ!」
ですが、子バクの言い分をまともに取り合う者は、誰もおりませんでした。

いつしか子バクも大人になり、やがて老い、死ぬ日を迎えました。しかし、彼の夢を、彼の子バクだけは信じていました。
「角があればきっとモテるだ」
子バクの子バクも夢を見て、子バクの子バクの子バクも、夢を継ぎます。

そして700万年後、「やったぁ! おら、サイになれただ」
とあるバクの子がそう言いました。

――さて、本作では、この世で2番目に馬鹿だ、と言われる『高校生男子』という生き物が夢を見ます。

通常の高校生男子であれば、
「あーあ、おやじがパイロットだったらな……」「今教室にテロリストが攻めてきたらどうしようかな」「あの子の母親が離婚して、うちのおやじと再婚しないかなぁ……」といった、しごく当たり前の妄想を繰り返すものですが、ウチの圭吾は違います。
夢は、たった一つ。
それもそんじょそこらの夢じゃございません。本物の馬鹿が見た、本物の馬鹿な夢です。子バク700万頭分とも言われる大夢。その果てになにが待つのか。

あれ、現実ってなんだっけ? 

……素敵な作品です。

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