第16話
<font color="#cd5c5c">「…この調子では、来年には琴の弟妹が出来そうね…」</font>
一晩に二度も三度も求めてくる、彦佐の強靭な肉体の下で、鈴はけだるげに笑う。
<font color="#4682b4">「いいね。子供はたくさん欲しい。鈴に似た子供がたくさん欲しい」</font>
寝所で毎晩、二人はじゃれあい、甘い言葉を囁きあって、夫婦の営みに励んだ。
鈴に自分の子種を植えつけたい彦佐の雄の欲求は強く、琴が生まれても尚、衰えない。
朝まで何度も鈴を愛して、寝不足になることも珍しくなかった。
それでも、彦佐は鈴を抱かずにはいられない。
<font color="#4682b4">「…鈴」</font>
<font color="#cd5c5c">「ん、彦っ…!」</font>
二人は体液を滴らせながら、飽きることなく本能のままに愛し合った。
身重の時には試せなかった体位、激しい愛し方を鈴に教え、彦佐は一滴残らず、子種を彼女に注ぎ込み、鈴は彦佐を胎内深く迎え、残らず彼の種子を飲み込んだ。
<font color="#4682b4">「…うっ!?す、鈴…、ちょ、待て…そんな、あ、ああ…!」</font>
満足げな彦佐に鈴は微笑んで、彼をさらに絞めつけた。
<font color="#4682b4">「ん、う…っ!す、鈴……が、あんまり絞めつけるから…気持ちよすぎて、少し出てしまったじゃないか…」</font>
粘着質な音をわざとたてるように腰を使いながら、彦佐を狂わせる、鈴の感度のいい密壷を掻き混ぜ続ける。
深く繋がりながら、彦佐は彼女の子宮の奥に向かって、子種を吐く。鈴が相手なら、彦佐は常に臨戦体制だ。
そんな彦佐の強い精力を拒む事なく、鈴が受け止めてくれるのが嬉しかった。
<font color="#4682b4">「鈴…、愛してる」</font>
<font color="#cd5c5c">「私も…大好き……」</font>
彦佐と鈴の結婚は祝福され、琴の誕生は皆に喜ばれた。
だが、例外もある。彦佐と鈴の幸せをよく思わない者もいた。
彦佐は頭がよく、人柄にも見た目にも地位にも恵まれていた。
人から慕われ、頼りにされ、幼い時から期待され、それに応えてきた。
同い年で、彦佐ほどではないが地位もあり、見た目にも恵まれたが、甘やかされて育ったため、自分勝手で傲慢な大人になった栄治には、それが面白くなかった。
村一番の美人の鈴を易々と手に入れた彦佐。皆に慕われ、尊敬されている彦佐。
幼い頃から、いつも比べられて来た栄治は、彦佐が嫌いだった。
心優しく、美しい妻を手に入れ、子供が出来て幸せそうな彦佐を、栄治は羨んでいた。
彼は彦佐を傷つけたいとずっと思って来たが、彦佐は賢明で逞しく、しなやかな精神の持ち主で、栄治の考えつく策などにひっかかるはずもなく、真っ向から太刀打ち出来るような相手ではなかった。
しかし、彦佐の弱点を栄治は知った。
彦佐の弱点。
それは、間違いなく『鈴』だった。
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