【4人台本】禍ノ壺

夜染 空

禍ノ壺


その蓋を、開けてはならない


ー禍ノ壺ー


志郎。大学生 肝試しに行った先の祠で壺を見つけ家に持ち帰ってしまう 霊感はなく笹ノ葉の姿を見ることも声を聞くことも出来ない (男性)


菖蒲。大学生 霊感があり笹ノ葉を完全に視認出来る(女性)


冴。大学生 志郎の彼女 怖がり 若干霊感があり笹ノ葉の声が聞こえる 身体を笹ノ葉に貸す◾︎で乗り移った状態のセリフになります(女性)


笹ノ葉。壺を守る妖怪 持ち出された壺を監視するため冴の身体を借りる(不問)


0:以下、本文


笹ノ葉:「M/その壺を開けてはならない…その壺には呪いが入っている。決して、開けてはならない……」


志郎:「なぁ、肝試し行かねぇ?」


冴:「え…肝試し?やだなぁ…怖いの」


菖蒲:「知らないよ?変なの連れてきても」


志郎:「菖蒲が言うと途端に怖いんだよな…」


冴:「あやちゃん…あやちゃんは行かないよね……?」


菖蒲:「んー…どこに行くかによる」


冴:「えぇ!?やめようよぉ!!」


志郎:「まぁまぁ!肝試しって言っても、ちょっと裏山の祠に行くだけだから!」


冴:「裏山の祠?」


菖蒲:「…そんなのあったっけ?」


志郎:「大昔に呪いを閉じ込めた壺が隠されてるらしいんだよ、それを見つけるだけだから!」


菖蒲:「物騒だなぁ…呪いって……」


冴:「や、やめようよぉ……」


志郎:「見るだけだって!な!?」


冴:「……ホントに見るだけ?」


菖蒲:「好奇心旺盛だからなぁ…持ち帰るなんて言わないでよね……?」


志郎:「大丈夫だって!」


菖蒲:「…まぁ、何かあれば私が分かるからいいか…」


冴:「あ、あやちゃん!?」


菖蒲:「危なくなったら逃げればいいし…見るだけなら大丈夫でしょ」


志郎:「お、さすが菖蒲!話が早いね!」


冴:「うぅ……ふたりが行くなら…行く」


菖蒲:「冴、無理しなくてもいいんだよ?」


志郎:「そうだぞ?お前怖がりなんだから」


冴:「べ、別に怖くないし!」


志郎:「…ちゃんと手ぇ握っとけよ?」


冴:「だから怖くないってばァ!」


0:そうして夜、肝試しに向かう3人は特に問題なく祠に到着する


志郎:「なんか……あっさり見つかったな…」


菖蒲:「ほんと。拍子抜けするくらいあっさりだったね」


冴:「…何も出なくてよかった…」


志郎:「えっと…これが壺?何か泥だらけで汚ぇな……」


菖蒲:「あ、コラ!乱暴に触るな!」


冴:「なんか御札貼ってあるし…取ったらやばいんじゃないの!?」


志郎:「へーきへーき!見るだけ!」


笹ノ葉:「おい、人間ども」


冴:「ひっ!!」


菖蒲:「誰だ!」


志郎:「え、なになに??」


冴:「し…しろ、今の聞こえなかったの……!?」


志郎:「だから、何がよ?」


笹ノ葉:「小僧!その壺を今すぐ戻せ!」


菖蒲:「お前は誰だ!姿を見せろ!」


0:祠の後ろから白い着物を着た男性が出てくる


菖蒲:「アナタは、妖怪?」


笹ノ葉:「…私は笹ノ葉…この祠を守る妖怪だ。小僧…私の声が聞こえないのか…?」


菖蒲:「残念ながら聞こえてないし、姿も見えてないよ」


冴:「な、何…?なんで声だけ聴こえるの…!?」


笹ノ葉:「…そちらの娘は声だけ…お前は私が分かるのだな…」


菖蒲:「そうみたいね」


志郎:「菖蒲、何と喋ってるんだ?」


笹ノ葉:「全く鈍感な小僧だ…ならば伝えろ、その壺を戻せと」


菖蒲:「……志郎、妖怪がその壺を戻せって」


志郎:「はぁ!?」


笹ノ葉:「さもなくば祟る…いいから早く戻せ!その壺には、数多の呪いを受けた妖怪を封じておるのだ!」


菖蒲:「の、呪い?」


冴:「何それヤバいやつじゃん!」


志郎:「お…おい、呪いってなんだよ!」


菖蒲:「志郎、とりあえず戻そう」


志郎:「はぁ!?」


冴:「なんかヤバそうだよ!戻そ!?ね!」


笹ノ葉:「小僧、その呪いが身に降りかかれば、貴様の命は無いぞ!早く戻せ!」


冴:「志郎!」


菖蒲:「志郎!早く戻せ!」


志郎:「…なんかよく分からんけど、戻さない!」


菖蒲:「はぁ!?」


冴:「ちょっと志郎!何言ってるの!?」


笹ノ葉:「正気か貴様!その呪いは(言いかけて遮られる)」


志郎:「呪いだか何だか知らないけど、とりあえずこの御札を剥がさなけりゃ問題ないだろ!」


笹ノ葉:「何を悠長な…札はただの結界…少しでも破れればそんなもの簡単に(またしても遮られる)」


志郎:「大丈夫だって!俺メンタル鋼だし!」


冴:「そーゆー問題じゃない!」


菖蒲:「妖怪がやめろって警告してる物だよ!?大人しく言うこと聞きなさい!」


志郎:「大丈夫大丈夫!んじゃ、これ持って帰るわ!」


笹ノ葉:「なんだと!?貴様、気でも狂っているのか!」


冴:「志郎、お願いだから戻して!」


菖蒲:「志郎!」


志郎:「…いや、俺にはその警告してる妖怪見えないし、なんなら声も聞こえないし…御札剥がさなきゃ大丈夫なら持って帰っても問題ないだろ?しかもこんなにちっこい壺の御札、持ち帰って補強するくらいで丁度いいんだよ」


笹ノ葉:「何を馬鹿な…」


菖蒲:「志郎、妖怪が守るって事がどれだけの意味を持ってるか分かる!?それだけ危険なんだよ!?」


志郎:「って言われてもなぁ…俺自分に見えるものしか信じないし…」


笹ノ葉:「ぐぬぬ…素質のないものに乗り移っても意味が無い……おい、お前!」


冴:「え、何…私!?」


笹ノ葉:「そうだ、私は*祠守ほこらもり…依代がなくてはここから動けん…だから、お前の身体を貸せ!」


冴:「え!?なんで私!?」


笹ノ葉:「そちらの女では守護が強すぎて入る隙がない!」


菖蒲:「…え、私そんなに強いモノが守護してるの?」


笹ノ葉:「なんだ、知らないのか…お前を守護しているのは青龍だ」


菖蒲:「……初耳ぃ」


笹ノ葉:「そんなものが守護する身体、おいそれ入ったら祓われるだけだ」


冴:「あの、身体に入るって、危なくないの…?」


笹ノ葉:「多少意識を乗っ取られる時があるくらいだ、危険は無い」


冴:「危ないよねそれ!!」


志郎:「なぁ、もぉ帰ろうぜ?要は済んだしさぁ」


0:3人揃って


菖蒲:「誰のせいでこうなってると思ってるんだ!」


冴:「志郎のせいでこうなってるんでしょ!?」


笹ノ葉:「貴様のせいだ馬鹿者!!」


志郎:「おぉう…すっげえ圧…」


笹ノ葉:「どうあっても壺を戻す気は無いらしいな…」


菖蒲:「こいつ言ったら聞かないんだよね……」


冴:「ちょー頑固…」


志郎:「え、なに、何で哀れみの目で俺を見るの?」


0:やれやれと言った感じで志郎を見る3人


笹ノ葉:「ふん、なら好きにするが良い…だがな、決してその札を剥がすなよ!」


菖蒲:「…御札剥がすなって」


志郎:「分かってるよ!」


冴:「心配だなぁ…」


笹ノ葉:「…すまんが娘…名はなんという」


冴:「さ、冴……」


笹ノ葉:「冴殿、しばらく身体を借りる。こいつが悪い気を起こした時は私が止める」


冴:「えっと…」


菖蒲:「志郎が壺を返さないんじゃ仕方ないよ…冴、ちょっと貸してあげたら?」


冴:「えぇ、あやちゃんまで!?」


笹ノ葉:「頼むっ」


冴:「……わかった、志郎が壺を返すまでね?」


笹ノ葉:「……!感謝する!」


菖蒲:「M/そんな訳で、頑固な志郎のおバカな行動は、妖怪を巻き込む事態になった…志郎は噂の壺を手に入れた喜びに舞い上がり、私達はそんな志郎が変な気を起こすのではないかとヒヤヒヤしながら数日を過した…」


0:数日後


冴:「◾︎小僧、壺は無事だろうな!」


志郎:「だから、冴の声でその口調やめろよな!?」


冴:「◾︎貴様が私の声を聞けないのが悪いのだ!この鈍感男め!」


志郎:「冴じゃないのに、冴に言われてると思うとなんか傷つく……」

菖蒲:「仕方ないじゃん、元はと言えば、志郎が壺を持ってきちゃったのがいけないんだよ?」


志郎:「だから!気が済んだから返すって言ってるだろ!?」


冴:「◾︎手に取った時点で気が済めば良かったのだ!それを持ち帰るなど…阿呆にも程がある!」


菖蒲:「笹ノ葉さん、こいつは昔からそうなんですよ…」


志郎:「俺のポリシーは『満足するまでやる』なので」


冴:「◾︎自信満々に何をほざいておるのだ!」


菖蒲:「私達も随分振り回されてますけど…いい所もあるんですよ?多分……」


志郎:「多分!?今多分って言ったか!?」


冴:「◾︎こいつのどこが良いのだか…皆目見当もつかないな」


志郎:「はぁ!?」

菖蒲:「仕方ないでしょ!?巻き添え食らって大変な思いしてるのはこっちなんだから!」


0:そうこうしているうちに祠に着く

0:笹ノ葉は冴の身体から出て志郎の持つ壺を確認する


笹ノ葉:「…問題ないようだな…」


菖蒲:「心臓に悪い事しないでよね……」


冴:「ホントだよ…ちょっと控えて欲しいよね…」


志郎:「まぁまぁ!何事も無くて安心あんし……」


0:祠に戻そうとした拍子に壺が手からすり抜け落下、その衝撃で壺が割れてしまう


笹ノ葉:「なぁ…っ!!!!」


志郎:「やっべ…」

菖蒲:「ちょっと!どうするの!!なんかやばいの出てきたんだけど!?」


冴:「何これ……っ耳痛い…!」


笹ノ葉:「貴様、やりおったな小僧…!!!」


志郎:「わざとじゃない!わざとじゃないからな!」


冴:「そーゆー問題じゃない!何この音ぉ…気持ち悪い…っ」


菖蒲:「冴!」


笹ノ葉:「くっ、やはり呪詛を蓄えていたか…っ」


志郎:「えぇ、なに、何が起きてるのぉ!?」


笹ノ葉:「貴様が落とした壺から呪詛が漏れ出ているのだ!これだけの邪気が充満した中…私の声も届いて…」


志郎:「おい菖蒲!なんでそんなに焦ってんの!?何!?何が起きてるの!?なんで冴倒れちゃったの!?」


笹ノ葉:「(オーバーリアクションで)嘘だろこのガキ!!何でこれだけ邪気が溢れてるのに私の声が聞こえてないんだ!?まさかこの呪詛も感じないのではあるまいなぁ!?」


志郎:「菖蒲!説明してくれよ、何が起こってるんだよ!」


笹ノ葉:「全然感じてない!!!!!」


菖蒲:「…あんた、ホントに分からないの?」


志郎:「いや全く、なーんもわからん」


菖蒲:「鈍感にも程がある……」


笹ノ葉:「こうなっては仕方ない…再び呪詛を封じるしか…」


菖蒲:「封じるったってどうやって!?」


笹ノ葉:「何か…何か形代になるものでもあれば………お前、そのぶら下げてさえいるものをよこせ!」


菖蒲:「…え、これ?」


笹ノ葉:「そうだ!この際なんでも良い!空の器があれば壺の代用になる!」


菖蒲:「えっと……はい!」


笹ノ葉:「……っ!」


笹ノ葉:「集え、集え…!万物の精霊よ、地の神よ!この形代に呪詛を封じる力を与え給え…!」


菖蒲:「…だめ、こっちを見ない!」


笹ノ葉:「…ダメかっ」


菖蒲:「……っ!?」


0:菖蒲の身体から何かが飛び出し、呪詛を食い掴むと真っ直ぐ形代の中に放り込む


菖蒲:「何今の……」


笹ノ葉:「青龍か!有難い…!」


笹ノ葉:「……封!!」


0:冴がカバンに着けていたぬいぐるみが淡く光り、邪気が晴れていく


冴:「…んぅ…」


菖蒲:「冴!良かった目が覚めた!」


冴:「…何が起こったの?」


菖蒲:「とりあえず、一件落着」


志郎:「……マジで何が起こったんだ…全然分からねぇまま終わったんだけど…」


笹ノ葉:「お前は二度とこの類に足を突っ込むな…」


志郎:「え、酷いなぁ!…って、あれ?」


菖蒲:「……今、笹ノ葉さんの声に反応してた?」


冴:「…多分」


笹ノ葉:「おい小僧、私の声が聞こえるか?」


志郎:「えっと……なんか聞こえる…」


笹ノ葉:「(結構ためてから)今更遅ーーーい!!」


0:その後


志郎:「で、そのぬいぐるみは菖蒲が預かることになった訳ね?」


菖蒲:「笹ノ葉曰く、私が持っていればもし封印が解けても青龍が何とかするからって」


冴:「危なくないの?」


笹ノ葉:「大丈夫だろう。私もいることだし」


菖蒲:「笹ノ葉…ちゃっかり冴に憑いたままなんだけど…?」


笹ノ葉:「祠守のお役目が終わったのだ。多少自由にしても良かろう」


志郎:「おい笹ノ葉!冴に変なことするんじゃねぇぞ!」


笹ノ葉:「お前じゃあるまいし、何を戯けたことを…。」


志郎:「はぁ!?俺がスケベだって言いたいのか!?」


冴:「ねぇ、すっごく変な目で見られるからやめよ?」


菖蒲:「そうだよ、笹ノ葉さんも、いちいち志郎につっかかってたら疲れるだけだよ?」


笹ノ葉:「…ふん、それもそうだな」


志郎:「お前らなぁ!!」


菖蒲:「M/とまぁ、こんな感じで賑やかになった私達。まさか妖怪が仲間になるなんて思わなかったけど、これはこれで楽しもうと思う」


笹ノ葉:「えぇい……」


冴:「◾︎うるさいわァ!!!!」


菖蒲:「M/……おわり。」






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【4人台本】禍ノ壺 夜染 空 @_Yazome_

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