桜田秀

午後10時。

「あら、もう寝るの?早いわね」

「うん。おやすみ、母さん」

「うん、おやすみ」

2階に上がり、自分の部屋にある布団に寝っ転がった。

やっぱりか。

自分の気持ちに嘘はつけない。

理人が告白に失敗した時、「良かった」と思ってしまった。

本当は理人のことを応援していたはずだ。

心の中では、告白できる理人を凄いと思っていた。そのはずだ。

でも舞衣と付き合わなくてよかったと思ってしまった。

それは自分が舞衣と付き合いたいと思っているからだろうか。

俺は舞衣のことが好きなのか。

そうか。

でも、本当にいいのだろうか。

今まで舞衣は友達であり、幼馴染である。

告白するということは、今までの関係を壊すことになる。本当にそれでいいのか。

好きならば付き合いたいと思うのが自然だろう。

でも舞衣と友達でいたいと思う気持ちもある。

その2つの気持ちが俺の中で入り混じっている。ずっと言い争っている。

「はあ。」

口に出してみた。何かが逃げていくような感覚になった。

昴たちはどうなのかな。

俺が舞衣と付き合ったら、関係は無くなってしまうのかな。

って、告白もしてないのに。自惚れか。

友情か、恋情か。

これが恋愛なのか。

考えれば考えるほど頭が痛くなる。

最近、こんな考えたことがあっただろうか。

もう、辞めよう。

俺は鼻の辺りまで毛布を被ると、目を瞑った。このまま眠りについてしまおうと思ったが、中々眠気が襲ってこなかった。


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