文化祭準備

10月。舞衣たちの学校では文化祭準備が行われていた。

「じゃあクラスの出し物決めまーす」

文化祭実行委員が黒板の前に立つ。早速、前の方で手が挙がった。

「はいはーい」

美琴だった。

「男装、女装カフェってのはどうかな!?」

「ほお、どんなのですか?」

実行委員が興味を示した。

「女子が男装をして、男子が女装をしてカフェをやるんです。」

「いいじゃん」「面白いかも」

周りからも賛成意見が上がっている。

「じゃあうちのクラスの出し物は男装、女装カフェでいい?いい人手ぇ上げてー」

大体の人が手を挙げた。

「オッケ。じゃあ服装をどうするかなんだけど...」

クラスで意見が飛び交った。

「買えばいいんじゃね?」

「カフェだから食材も買うのに服も買ってちゃ費用が足りないよ」

「私服貸し合うとかは?」

「えー、男子に服貸すの?生理的に無理なんだけど」

すると、ある男子生徒が意見を発した。

「制服はどう?」

「制服ですか。成程、確かに制服ならネクタイやスカート、スラックスを貸せばいいですもんね。いいじゃないですか、それで行きましょう。」

そして、舞衣たちのクラスの出し物は男装女装カフェになり、女子は男子から、男子は女子から制服を借りることになった。

(まじか〜。誰から借りよう...。秀とかどうかな)

舞衣が秀たちのところに行くと、4人は何やらコソコソと話をしていた。

「...どうしたの?」

ぎくっと肩を上げた後、舞衣の方を向いた。

「えっと...その...誰が舞衣の制服を借りるかって話をしてて...」

舞衣は状況が理解できた。4人が舞衣以外の女子と話しているところを見た事がない。

「悠斗や大晴はコミュ力あるんだから他の女子から借りられるだろ!?」

「無茶言わないでくれよ。俺だって藤咲ちゃん以外の女子と話したこともないんだから」 

後ろで悠斗が頷いている。

(なんか嫌な予感がする...)

今にでも4人の間には火花が散りそうな雰囲気だ。

(私のために争わないでー、なんて言える状況じゃないっ!)

すると、近くを小豆沢が通った。

「何してんだ?お前ら」

「んあ?あぁ...。小豆沢は余裕そうだな。女子から借りれたのか?」

「ん?いや、姉のを借りるだけだが?」

4人は目を丸くした。

舞衣はポンッと手のひらにグーにした手をつけた。

「そうじゃん、理人、お姉ちゃんが4人いるんだよね」

理人が頷く。

「あー。もしかして服借りる人がいないのか?」

4人は図星を指され、固まった。

「それなら3人貸せるぞ。」

パァッと4人の顔が明るくなった。

「さっすが小豆沢〜!」

「まじ助かる。」

ヨイショヨイショと小豆沢を持ち上げる。

「ええ...。でも、貸せるのは3人だぞ?」

「わっ私も男子の制服借りたいし...」

「じゃあ俺の貸そうか?家も近いし、いいんじゃね?」

「ありがとう、秀」

さっきの雰囲気はどこへ行ったのか、4人はいつも通り楽しげに話をしていた。

(仲拗れなくて良かった〜)

舞衣はそう思うしかなかった。

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