いつものヤツら
黒井ちご
あの人たち
住宅街の中にある公立高校。その高校は今日入学から初授業だった。
その高校の1年生として入学した藤咲舞衣〈ふじさきまい〉は、クラスの席に座っていた。
「おはよー!舞衣っ」
舞衣の中学からの親友、桃瀬美琴〈ももせみこと〉が話しかけてきた。
「おはよう、みこ」
美琴は席を舞衣の席の隣に椅子を持ってきて座った。
「ねーねー、あの人たち、同じクラスなんだね。声でかくね?」
美琴が指をさした方向には、4人の男子がいた。
「...秀?」
その声が聞こえたのか、レモン色の髪をした男子が舞衣の方を向いた。
「え、舞衣じゃん!」
そう叫んだレモン髪が舞衣に近寄ってきた。後ろから残りの 3人がついて来る。
「え、舞衣、知り合いなの?」
「そう。家近くて、幼馴染なの。」
美琴がほえーと頷いた。
「はい!桜田秀〈さくらだしゅう〉って言います!」
後ろにいた 3人が秀に「お前幼馴染いたんだ」、「女子...」などとぼやいている。
「えーっと、秀、後ろの人たちは...?」
秀が紹介する前に、オレンジ髪と濃いピンク髪の男子が前に出た。
「こんちはぁっ!藁科大晴〈わらしなたいせい〉って言います!」
「三葉悠斗〈みはゆうと〉です!」
舞衣も「藤咲舞衣っていいます。よろしくね。」と挨拶した。
しかしあと1人、黒髪の子が出てこない。
「すばる〜?」
黒髪は前に出てきた。
「菊葉昴〈きくはすばる〉です...。よろしく...」
昴は舞衣と目を合わせなかった。
「ええと、うん。よろしくね...」
美琴がちらりと時計を見た。
「やばっ、もうチャイム鳴るっ」
美琴は椅子とともに席に戻っていった。4人も「じゃーね」と言うように片手を挙げたり挙げなかったりした。
先生が教室に入ってきて、授業が始まった。
「えーと、まず今番号順になっていないので席を変えます。」
先生が書いた黒板の席は、廊下側から三列目の1番後ろだった。
全員がガタガタと机を移動させる。舞衣が席を移動させた後、隣の席の人が来た。
「あっ、三葉くん!」
隣の人は悠斗だった。
「おー藤咲ちゃんかー。よろしく!」
机の音がなくなったので、先生が話を切り出した。
「えーと次に、このクラスの学級委員を決めます。立候補はいませんか。」
しかし、手を挙げる人は誰一人いない。
「ふん。じゃあ推薦はあるか?もしかしたら知らない人もいるかもしれないが。」
廊下側の席から手が挙がった。
「中学でも学級委員やってたんで、藤咲さんがいいと思いまーす!」
美琴だった。
「おお、そうか。藤咲、いいか?」
「はい、大丈夫です。」
「じゃあ女子の学級委員は藤咲で。よろしく。」
拍手が出る中、舞衣は肩を突かれた。
「藤咲ちゃんって、中学学級委員だったんだ」
頷くと、すげーとぼやいて前を向いた。舞衣も前を向くと、誰かが推薦したのか、男子の学級委員も決まっていた。
放課後。舞衣は初の学級委員の仕事で荷物を運び、教室に戻ってきた。
すると、教室に人がいて、その人が不意に立ち上がった。
「ふ、藤咲さん...」
昴だった。
「菊葉くん、どうしたの?」
「え、と、その...朝、全然目とか合わせられなかったから、その、気にしてるかなって思って...」
舞衣は朝のことを思い出した。
「ああ、そんなそんな!気にしてないよ」
「そっ、か。ごめんね、僕、人見知りだから初めて喋る人と目が合わせられないんだ...」
「そっか。分かった。」
舞衣はかばんにペンケースを入れ、チャックを閉じた。
「あ、んと、それだけ!じゃあね!」
「えっ」
昴はそそくさと教室から出て行った。てっきり一緒に帰るもんだと思っていた舞衣は拍子抜けしてしまった。
そして、舞衣の騒がしくて楽しい高校生活が幕を開けたのだった。
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