明日世界が終わる時、貴方は何をしますか?

憂太

第1話 人生で1番長くて、短い日

「あー、暇だな」


遥香は学校の屋上のフェンスに肘をつき、

ボーッと景色を眺めた。


(そうだね。なにしよっか、)


私の心の中の誰かが返事をした。


「何もしたくない。ボーッとしてたい。」

遥香は何かを失ったかのように言った。


(最後くらい好きな事しようよ)


「最後くらい?どういうこと?」


(君は知らないかもしれないけど、明日世界が終わるよ)


「そんな訳ないじゃん。もう少し面白い冗談言ってよ。」


遥香は少し笑いながら呆れたように言った。


(じゃあ今日の夜12時、日付が変わる時、今日が明日になる時に世界が終わるとしたら君は何をする?)


心の中の誰かは私を試すような質問をした。


「そんなこと考えた事もなかった。ただ、ボーッとするかな」


(君は今16歳、明日になると今までの16年間が無駄になる。水の泡となる。それでもボーッとするの?)


「じゃあ好きな事するよ」


(なんで好きな事をするの?何をしても明日には消えるんだよ。)


「何が言いたいの。私が好きなようにするよ」


(そしてそれが本当に明日世界が終わるとしたら今、君は何をする?)


「…」


遥香は美術室に向かった。ドアを開けても誰も居なかった。相変わらず居心地がいい。筆箱から鉛筆を取り、椅子に座った。


スッ… スーッ…


鉛筆を走らせる音が美術室に響く。


(楽しい?)


「うん。でも少し、寂しいかも。」


ガラガラガラ…


美術室のドアが開いた。


同じクラスの海斗だった。


「遥香ここで、なにしてるん?」


「海斗まだ帰ってなかったんだ。暇だったから小説書いてる。」


「へーそうなんだ。楽しい?」


「え?うん。楽しいよ」


「いいな〜好きな事があるって、俺なんか毎日やることがないんだよな〜」


海斗は机の上に座って言った。


「好きな事くらい誰ににもあるでしょ。私は小説を書くくらいしか好きな事ないけど。」


遥香は素っ気なそうに言うと、


「遥香は凄いな。」


「なんで?」


「好きな物を好きって言うの勇気いるからさ」


海斗はあぐらをかいて窓の外を見ながら言った。


「あ、ごめん。帰る時間やわ」


海斗は机から降りて美術室から出た。


「海斗って変だね。好きなことは人に言わなくてもいいのに。」


(人って最初はみんな無色なんだよ。透明なんだ。)


「どういうこと?」


(人は生きていくうちに自分の色を見つける。海斗くんはまだ透明みたいだね。)


「それっていい事なの?」


(それはその人次第だね。)


遥香は再び鉛筆を走らせた。




時計を見ると18:14だった。少し、帰る時間から遅くなった。遥香は荷物を持って、美術室から出た。


家に帰ると。


「おかえり。遅かったね。」


お母さんが迎えてくれた。


「夜ご飯出来てるよ。早く一緒に食べよ。」


(この君のお母さんが作るご飯も今日で最後だよ。)


「はいはい。」


(まだ信じてないみたいだね。後悔するよ。)


お風呂から上がり、布団に入った。


時間は22:21だった。


(もう少しだよ。当たり前のように明日が来るのは今日で最後だよ。)


「てか、なんでそんなことが分かるの?」


(なんでだろうね。分からない。僕が君にこの事を言ってなかったら、君は日頃の当たり前を何一つ感謝しないで終わる所だったよ。)


「仮にそれが本当ならありがとう。」


遥香は幼少期の頃を思い出しながら眠った。




『おもしろいじゃん!』

『でしょ。』

『遥香が書く小説ってなんか不思議で面白い!』

『ありがとう。』


『もし本当に明日世界が終わったらどうしよう!』


『何言ってんの、ある訳ないじゃん』


『だよね!じゃあバイバイ!また明日学校ね!』




20:00

夜ご飯を食べた。


21:00

お風呂から上がった。


22:00

布団に入った。


23:00

眠りについた。


24:00












︎ ︎︎︎︎︎







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

明日世界が終わる時、貴方は何をしますか? 憂太 @maechuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ