第25話 文化祭準備
「それでは、文化祭の出し物について何か案がある人は挙手で教えてください」
とびとびでスカスカだったため、あんまり特別感のないゴールデンウィーク明け、6月に文化祭を控えた私たちは、そろそろ文化祭準備に目を向けていくことになった。
文化祭実行委員が壇上に立ち、意見を求めるが誰も手を挙げない。
「じゃあ、15分時間とるので周りの人と考えてみてください」
というわけで、私は文化祭で何をやりたいか真剣に考えることもなった。一人ではいい案が思い浮かぶ気がしないので、隣の子と一緒に考える。
「何がいいんだろうね〜」
うーん、と可愛らしく首を捻ったお隣さんの名前は小雪ちゃん。ほんわかした雰囲気で、天然パーマがよく似合っている。
なかなか馬が合うので、ペア学習のとき以外、休み時間などもたまに話すようになった。
「メイド喫茶とかどう? 小雪ちゃん似合いそう! 」
「えー? 私はいいよー。桐乃ちゃんは? メイドさんの格好する気あるの? 」
「え、私はやだ」
「発案者がそれじゃダメじゃん〜」
痛いところを突いてくる小雪ちゃん。だって、小雪ちゃんはすごい似合うだろうけど、絶対私似合わないもん! メイドさんの格好なんてするもんですか。
「うーん、そしたら、ありがちだけどお化け屋敷とかどう? みんなでお化けの格好するのとか楽しそうだよね〜」
今度は小雪ちゃんが提案する。
「たしかに。じゃあそれで案出そうか」
二人で頷きあって、余った時間は適当におしゃべりした。
「はい、じゃあ15分経ったので何か案ある人、お願いします」
まず一番最初に、ビシッと手を挙げたのは元気な男子であった。
「お化け屋敷とかどうですかー」
「はい、お化け、屋敷っと」
もう一人の文化祭実行委員が黒板に案を出していく。
「言われちゃったね」
小雪ちゃんが私にコソッと囁いて、肩をすくめた。
「ね」
私もあらら、という風に笑った。
そこから、メイド喫茶、脱出ゲーム、射的やヨーヨー掬いなど夏祭り風の出し物など色々な案が出たが、結局多数決でお化け屋敷に決まった。
「良かったね、最終的にお化け屋敷に決まって」
「ねー、これから楽しみだな〜」
小雪ちゃんは楽しそうに体を揺らした。
「文化祭ってさー、準備してるときが一番楽しいよね! 本番? というか、始まっちゃったらあっという間だけど」
小雪ちゃんが、そう言って楽しそうに笑う。笑顔も髪もふわふわしていて、まるでファンタジーな世界の森に住んでいる精霊みたいだ。
彼女が笑えば花が咲き、肩にはいつも鳥や虫たちが止まっている、そんな精霊。透明な羽でもつけたらピッタリじゃなんじゃないかと思う。
「ちょっと、聞いてるー? 」
「聞いてる聞いてる! 花かんむりをかぶせたいよね! 」
なぜか妄想の続きを語ってしまう私。
「お化けに!? 可愛くなっちゃうよ!? 」
勢いよく言った後、少し悩んで、そういうのもアリなのか? 多様性なのか? と悩み始める小雪ちゃんであった。
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