第24話 エゴ

 キーンコーンカーンコーン


 鳴り終わるまでに座らないと遅刻認定される、悪魔の鐘が鳴った。


「やば。じゃね! 」


「うん、また後で」


 ナオは急いで教室に戻っていく。私も急いで自分の席に着いた。



 一時間目の古典が終わった休み時間、さて、今日はなんにもやる気が起きないので寝ようと思ったとき、突如視界が暗くなった。後ろから、手で目元を覆われたらしい。


「だーれだ? 」


「ユカ」


「即答だぽん! 語尾も変えたのに、やっぱり声で分かるぽん? 」


「声聞く前から分かってたよ。こんなことしてくるのユカだけだもん。私の友達の少なさな舐めんなよー? 」


「さ、さすがサノっちだぽん! 」


「……ねえ、今日もさ、一緒にお昼ご飯食べよう」


「……? もちろんだぽん! ずっと一緒に食べるぽん! 」


「フフ、ありがと」


 あえて、来未のことはまだ伝えないでおく。来未に感化されてユカは友達づくりを張り切っていたし、また来未と一緒にご飯食べたがるかもしれないが、ナオと一緒に今日あったことを話そう。


 2時間目の英語の時間、新しいペアの人と英文を読み合った。


「アイ、ファウンドア、ティニーホール、インザウォール」


「そこ、タイニーホールって読むんだよ」


 私が英文を読むのを、真剣な顔でじっくり聞いていたふわふわヘアーのお隣さんが教えてくれる。


「え、そうなの!? ありがとう教えてくれて」


「ううんー、お互い様だよ」


 初めましての人だけど、親しみやすくて優しいし、どうやら上手くやっていけそうだ。


 そしてお昼休み、ナオが教室にやってきて、三人で机をくっつけて食べることになった。


「今日は来未ちゃんいないぽん? 」


 不思議そうに尋ねるユカに、私たちは今来未がどういう状況なのか、それに関して協力を頼まれたこと、でも色々あって断ったことを話した。


「だから、今後一切来未とお昼食べることはないかなっていう。もちろんユカの付き合いにとやかく言うつもりはないんだけど、私たち二人に関してはそんな感じだから」


「そんなことがあったぽんねー」


 ユカは呑気にタコさんウィンナーを口に放り込みながら言った。モグモグ噛んで、しっかり飲み込む。


「そういうことなら、たぶん俺っちも今後来未ちゃんと関わることはないぽんね」


「え、別に無理しなくていいんだよ」


「うん、ほんとに。仲良くするなってことじゃなくて、一応こういうことがあったよってユカには伝えておきたかっただけで」


 3組のカーストトップ層に目をつけられている来未と、安全の面で言えばそりゃユカに関わってほしくはないけど、それは私たちが強制できることじゃない。


 だから、ただ起きたことを伝えるだけに留めようと思ったのだが、エゴが出すぎてしまっただろうか。


「俺っちは全員と友達になることを願った来未ちゃんの魂だけ受け取っておくぽん。俺っちも面倒ごとは嫌いだし、賢い二人がそう判断したなら俺っちもそれに倣うぽん」


「えー、なんか意外かも。勝手に来未とユカって似てるタイプだと思ってたけど」


「ユカ、結構シビアなとこあるよね」


 友達の新しい一面を発見できたのだった。


 







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