第21話 欠陥品の箱庭
5時間目後の休み時間、トイレに入っていると、ゾロゾロと集団が入ってくる気配がした。もう用は済んでいたが何となくこのタイミングで出ていくのは気まずくて、無意識に彼女らの会話に耳を澄ましてしまう。
聞いているうちに、その集団がさっき一緒にお昼を食べた女子たちだと分かった。ちょうどそのことについて話していたから。
「ちょっとさー、照澤さんウザいよね。あんな張り切って仕切っちゃってさー、何様だよって感じ」
「それなー。てかさっきマジでつまらんかった。全員と友達になるとかさ、普通にバカだよね。よく分からん陰キャまで連れてきてさ。まじでノリ合わんわ」
「ねー。え、なんかもう腹立ったしさ、明日から無視しない? 」
「良いね名案ー」
「アイツめっちゃショック受けそうじゃない? やばウケるー」
「まじムリなんだけど。想像しただけでおもろい」
下品な笑い声を立てながら、彼女たちはいかにも面白いことを計画しているみたいに話す。知らないうちに眉をひそめていた。気分が悪い。
早くその汚い口をつぐんでトイレから出て行ってくれないかと思った。同時に何もできない自分に苛立ってもいた。
こうなることが全く分かっていなかったわけではない。来未みたいなタイプは、真っ先に悪ノリの標的にされる。それは小中学校での経験から、多少学んだことだが。
でも、高校生になってまでそんなことするのか。バカじゃないのか。
一体知能がどこで止まっているのだろうか。幼稚すぎるだろうと思うし、知り合って間もないけど来未は良い人だってわかる。バカにされて、許したくない。
ついでに陰キャだのなんだの勝手に言われて腹が立つし、本当なら制裁を加えてやりたい。
だけど、ここは数が絶対の世界。論理じゃない。そんなのは通用しない。結局、一番多く人を引き連れた強いやつが、周りを同調させてくだけだから。
逃げられない社会の箱庭に私たちは置かれている。
コミュ力、容姿、頭の良さ、運動神経、上手く人をおだて、同調する力。そういう分かりやすい能力を持っていないと、ここでは相手にされない。
本当の社会だったら、もっと楽かもしれない。自分の能力に適した場所を見つけて、そこで活躍できる可能性がある。もちろん全てが上手くいくとは限らないかもしれないし、色んなところからの圧力も多いんだろう。
でも、価値観が固定化されたこの場所よりはマシなんじゃないかなって思ってる。基本どこに行っても一緒だし、大抵逃げられないから。
所詮ここはそういう世界だ。常々思う。
学校は、欠陥品の箱庭だ。
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