第18話 自己紹介
再会を喜び合い、程なくしてホームルームが始まった。新しい担任の先生が簡単に自己紹介をする。その後すぐに体育館に誘導されて、始業式が始まった。
校長先生のありがたい話はちゃんと聞き流していたらいつのまにか式は終わって、またぞろぞろと教室に戻る。
壇上で、新しい担任が声を張り上げた。
「それじゃあみんな自己紹介をしていきましょう! 名前や好きな食べ物、趣味、あとはみんなに一言など、適当に言ってってください! はい、じゃあ1番からどうぞ! あ、30秒だけ考える時間あげます! 」
小学校かいなと思った。こういうことは張り切るタイプの先生らしい。正直だるい。
私の出席番号は3番なので、すぐに順番がくる。幸い、いつも出席番号は5番より小さいので、自己紹介で何を言うかは頭に入っている。
「天川桐乃です。好きな食べ物はオムライス、趣味は映画鑑賞です。一年間よろしくお願いします」
こういうのでいいのだ。こういう、無難でとってもシンプルなので。誰も私に大喜利なんて求めてない。
自分の番が終わると一気に気が楽になるので、他の人の自己紹介をよく聞いておく。だけど、ほとんどの人が私と同じように無難な自己紹介をする。
そういえば、ユカはどんな自己紹介をするのだろう。去年はほとんど全員が初めましての状態だったし、特別ユカの自己紹介に注目しているわけじゃなかったので、彼女の自己紹介をよく覚えていないのである。
そんなことを考えていると、ついにユカの番になった。ユカはイスが15㎝吹っ飛ぶくらい勢い良く立ち上がる。あ、やべという顔をしたユカは赤面しつつ自己紹介をした。
「えええっと、
めっちゃ普通だった。
そういえば、ユカは節度ある中二病であった。そもそもあがり症なところがあるのでは堅くなってしまうらしい。
それに普通に目上の人には敬語使うし、公共の場でも標準語を話す。
どおりでユカの自己紹介が特別印象に残ったわけではないのだと、今更ながら納得した。
その後もどんどん自己紹介は進められていく。最後の方には、羽瑠の自己紹介があった。どんなことを言うだろう。
「八坂羽瑠です。好きな食べ物はチンゲンサイ。趣味は音楽を聴くことと、ギターの練習です。チンゲンサイが好きな人は私に声をかけてくれると嬉しいです。仲良くなりましょう。もちろん、好きじゃない人とも友達になりたいです。一年間よろしくお願いします」
うん、ぶっぱなしてた。
実は私、去年も羽瑠と同じクラスだったのに、羽瑠の自己紹介を覚えていないのだ。こんな自己紹介を、よく忘れられるなと思う。最後の方だったからそもそもあんまりよく聞いていなかったのかもしれない。
そうして、驚きの多い自己紹介の時間は終わったのだった。
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