第16話 プチお菓子パーティーと共に

「ナオ氏、サノ氏……」


 二人で先にお菓子をオーペンしてると、ユカが焦点の合わない虚ろな目でフラフラと帰ってきた。


 意識が朦朧としていようとも、ユカはきちんと私たちの間に用意されたイスに座る。


「未だに自分の身に起きたことが信じられない……」


 ユカは独り言のように話し始める。ユカが少しでも話しやすいように、私たちは神妙な顔で相槌を打つ。


「な、なんと……」


 ユカは虚ろだった目をカッと見開いた。


「先輩から、改めて告白されちゃったんだよぉぉぉぉぉ! これは夢かぁぁぁぁぁああ!? 」


「「ぇぇえええええぇぇえ!! おめでとおおおおおお!!!! 」」


 私たちは目一杯ガッツポーズをし、クラッカーの代わりにスナック菓子を勢い良く開封した。それをユカの方に差し出す。


「さあ、どうぞお菓子でございます」


「私たちの奢りですので、どうぞたくさんお召し上がりください」


「いいの!? ありがと~! 」


 ここで変に遠慮せず、素直に受け取るのがユカのいいところである。


 私たちは片方ずつユカの肩に手を置いた。


「その代わり」「告白のことを詳しく」


「「聞かせてくださいなっ! 」」 


「まあ、お菓子もくれたし二人は色々手伝ってくれたから、話してやってもいいのだのだ」


 ユカはいつも通りの口調に戻って、図書室でのことを事細かく話してくれた。


 申し訳ないが、語尾がやかましいので割愛。例によって私が勝手にまとめる。


──────────


 ユカがカウンターに入ったとき、先輩はもう先に来ていて、昨日二人の間には何もなかったみたいに、普通に挨拶してくれたらしい。


 ユカによると、先輩に気まずそうな態度をとられなくてホッとした気持ちも半分あったが、告白したことがなかったみたいでもの寂しい気持ちにもなったという。


 そのまま二人は協力してカウンター業務をこなした。図書室には途切れることなく人が訪れていたが、一瞬だけ人がいなくなった時間があったという。


 図書室は静寂に満ちて、窓から差した光が木目の床を四角く照らしていた。

 

 ユカは先輩と何を話せばいいか分からなかった。告白のことを聞くべきなのか。それとも、何も言わない方がいいのか。はたまた無難な雑談をするべきなのか。


 緊張で身を固まらせていたとき、図書室のパソコンで作業をしていた先輩がユカを手招きした。


 カチコチに身を固まらせたままユカが先輩の側に寄ると、先輩はカウンターの隅に置いてあった本のバーコードを、上から順番に読み取り始めた。


 図書室のパソコンは先輩の貸出画面になっていて、順々に本のタイトルが並んでいく。


「頭文字、上から読んで」


『すきです。こちらこそよろしくおねがいします』


 ユカが顔を上げると、先輩は顔を赤らめていた。


「面倒くさいやつだな、とかできたら思わないでほしい。どうしても僕からも伝えたかっただけなんだ」


───────────


「それで、先輩は改めて言ってくれたのだのだ! 『好きだよ』って。キャー! 」


「「おおー!! 」」


 ナオと二人揃って拍手をした。


「先輩、粋なことすんじゃ~ん」


「図書委員ならではの告白方法だよねー」


「ちょっとまだ実感が湧かないのだのだ~」


 幸せそうな顔でデロリととろけるユカ。彼女の頬をムニムニ引っ張る。


「改めておめでとう! 」


「うん、おめでとう! 」


 それを聞いて、ユカは一層嬉しそうに頬をとろけさせるのだった。


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