第2話ドラゴン

たっぷり英気を養い、ホロンと共に起きる。


「ほい、果物」


「これだけか?少なすぎる」


冒険の初めって食料不足なんだよね。


「大丈夫。これ、果物に見えるけど食べたらちゃんと美味しい料理に偽装させた別物なんだよね。見た目はこんなんだけど量とか多いよ」


「凄い。果物に似せた違う食材だ」


「やっぱりそこは外せない」


ホロンは仕切りに感心して、さてと、と立ち上がる。

今日はどうするのかと聞かれる。


「もちろん、冒険の初心はモンスター討伐!スライム用意してまっせ!」


CGじゃなくて実写。

魔法で巧みに動かす。


「どう?凄くない?モンスターっぽくない?」


「凄い。生きているみたいだ」


生きてないから大丈夫。


「ホロンはあれをばっさり切るんだからね?」


「そうか」


「出来るだけ立ち回りしてね。苦戦して」


「分かった」


ホロンは言われた通り剣(レプリカ)をブンブン振り回してはスライムの攻撃を当たり、当たられ、苦戦の末に倒す。


「なにか落ちている」


拾い上げると昨日リーシャが考えていたスライムの素材(偽物)である。


「それはスライムを倒すと出てくるスライムの素材」


「スライムの素材」


存在しないモンスターの素材を集めてどうするというのだろう、と彼女は混乱。


「あ、大丈夫大丈夫。のちのちクエストで使うから」


「クエスト(存在しない)??」


存在していないクエストに、存在しない素材。

ホロンは頭が混乱して、取り敢えずポーチに入れた。


「存在してないから、余計にわけがわからないんだが」


打ち明けるとリーシャはからりと笑う。


「へーきへーき!私達だって存在してない剣士と姫だもん」


そういえば、そうだった。

これは、異世界を巻き込むこととなる、ロールプレイングゲームなのだ。


「スライムを倒したら進もう。ちょくちょくトーク挟みつつね」


「トーク」


「やっぱ旅は会話がなきゃね」


「旅??旅してるんだったか?そうか、してたな」


エルフ的に旅じゃなくて散歩というか、旅行というか。


「あ、宝箱みっけたよ」


「宝箱???とは??」


宝箱など人生で現実に見たことないぞ、と向こうを見ると宝箱があった。

そして、手前には頭に髑髏マークの描かれたエキストラ盗賊(唐突に指名されたお店でお酒を飲んでいた男性一名様)。


「ホロン、宝箱には良いものが入ってる。でも盗賊を倒さないと奪えないんだよ」


「盗賊から宝を奪ったら私達は第二の盗賊なんだがな」


ホロンは取り敢えずお宝を盗賊風のお兄さんから奪還する為に、押し合いの剣捌きに徹する。


「がんばれホロン。HPが赤色だからもう直ぐだよ」


「その概念はどこからやってきた?」


勿論、動画編集時に出現させる予定。


死闘の末、ホロンは盗賊を倒して宝を得る。


因みに、盗賊のエキストラお兄さんは生暖かい目で帰っていく。


宝の中身は盾。


「???。思ったんだが、この盾を盗賊が使えば良かったんじゃないかと」


「装備出来るのホロンだけだからむりじゃない?装備しようとしたら弾かれるんじゃない?」


「無体な盾だな」


ホロンは盾を装備する。

この盾を作ったのはリーシャだ。

デザインにはこだわったよ。


「剣と盾の次はなににしよっかなあ」


今日の動画はまだ続く。

歩き出す二人はトークという動画にか欠かせない要素を交えて進む。


「お、街が見えてきた」


「ここは私たちの街と隣り合ってる。いや、待て、なんだか廃れてるぞ!?」


うちの街と大差ないような見た目だったのに、朽ち果てる前の前くらいの見た目に変化してしまっていた。


「実は事前にここの町長に話をしておいた。仕込みって大切じゃん?」


「大掛かりになってきたな」


「町長すっごいノリノリだったよ」


そんなバカな。

と、ホロンは思ったが街人やボロの布を纏う町長を見て、絶賛乗っかってる!?とこれ以上ない証拠に驚く。


「おや、旅のお二人、こんな寂れた街にどうしました?」


すっごい笑顔。


「実は、途中で盗賊と出会い、命からがら逃げてきたのです」


漸くリーシャが姫らしいセリフを言った。


「まあ、それは大変ね。最近はここも魔物の活動が活発になってきたから、盗賊もおいそれと外へ出られないのよ?」


「この人達、演技派だな」


毎度言うが、この世界にはモンスターなど居ない。

演技力S Sかとみまごう者たちの街ごとロールプレイング、始まるよ!


「宿、確保!旅の醍醐味はクエスト」


わくわくして、クエストを出してくれる人を見つけて駆け寄る。


「農作物がドラゴンに荒らされたのだ。どうか退治しれねーか?」


「この人は私たちを歴戦の戦士かなにかと勘違いしているのではないか??ドラゴンとか、無理だ!」


ホロンが叫んだ。

リクエスト不受理というわけか。


「ホロン、リクエストはね、拒否できないんだよ?知らないの?」


いくらバツボタンやBボタンを押しても無理矢理押しつけられるのがゲームというものだ。

ホロンは、空の顔になって宿泊予定の宿に入っていく。

あ、すねちゃったかな?

によによしながら後を追う。

翌朝、ホロンは私を残して住んでいる場所に戻って、もりもりご飯を食べていた。


「もー、なんでえ?」


クレームを言うと彼女から剣を渡される。

それでお前がドラゴンでも対峙しに行け、と押し出された。

仕方なく姫様が向かったのであった。

ま、姫も戦ってことだよね!

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偽物剣士と偽物姫 リーシャ @reesya

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