第3話鋭い目で私たちを見ている!

どうやら、エルフのコスプレだと思われている。

まあ、確かに本物とは思わないよね。


ということは、どうやって信じてもらえば良いのだろう。

途端に、なにもかも面倒になった。

どれほど遠回りすることになるのか、目に浮かんだせいだ。


「門前払いされる」


首相官邸に着くが、やはりどうしたものかとぶち当たる。


悩んでいると、建物を透視して首相や幹部達が勢揃いしているのを知ったエルフが皆に教えるので私も透視して中を見る。


「総理、どうするのですか!早く指示を!」


「待ってても落ちるだけだ!早く言え」


なにか慌てている。

見ているものを更に鮮明化させると映像は宇宙を映していて、地球と小さな何かが近付くことを窺えた。


「隕石、到達、14時間」


地球と隕石がここに落ちてくるらしい。


「え?私の可愛い可愛い人間ちゃん達が減っちゃうの?」


都市は最悪滅ぶのではないかという大きさ。

それを淡々と説明すると帰ってきた一声だ。

気にするところおかしくないか?


「リリシヤ?」


甘ったるい声にウンザリ。


「お願い。ここに入るのよね?」


「まあ、うん。今はまだ実績ないからほっぽり出されておわり」


人間が沢山いる施設としか思ってなさそう。

たっぷり間を置いてこちらを見つめるエルフ達の目。

目、目、目。

それに見つめられたのちに大きなため息を吐き出す。


「しっかたない。はあー。わたしはどっちでも良いんだけど、誰かあの隕石をどうにかしたい人は居る?」


あの隕石程度、ダンボールが棚から落ちてくるレベルでどうにでも出来る。

誰かしたいエルフは居るかなぁ?

因みにここぞとばかり活躍すると嫌というほど人に囲まれまくる未来。

そう付け加えるとエルフ達がシュバッと手をあげる。


そういうと絶対に全員手を上げることは理解していたので然もありなんだ。

首相官邸を見るエルフ集団はスマホにバンバン撮られながらも、何食わぬ顔で佇んでいた。

これぞ上位種たる余裕さだ。


全員がやりたいのならばやればいい。

一人だけにしろだなどと一言も言っていないし。

面倒なことになったなと1人愚痴る。

これをエルフ達がやったことをまず人間側に認知してもらう。

そのためには、相手にまず説明をしなければならない。


干渉する予定でなかったのにどうしてこんなことに。


七面倒でもある。

リリシヤはもう隕石をどかして人間に纏わりつかれることを夢想している彼女達を尻目にイラっとなりながら、門の前に立つ門番に手紙を預ける。


大体、私たちはエルフ、私たちは魔法を使える。

隕石を退かせる。

どの言葉も信じてもらえないに決まっている。

信じるのはリアリストではない部類の思考だけ。

そんな人がたまたま首相官邸にいる訳がない。


というわけで、先ずは相手に反論する余地を無くさせる証拠を先に作っておくことにした。


手紙を先に渡しておけばマッチポンプだと思われる事が減るかなぁって。

楽観的な結果にはならないかもしれないけど。


それに、全員から敵意を向けられても、それさえデレデレして受け取るのが彼らだ。


同族だと思われたくないな。


そう思いながらイヤイヤ、仕方なく証拠の為に手紙を認めて門を守る守衛に渡すと、怪訝な顔でこちらを見てから手紙を見る。


結果、イタズラな手紙を寄越してっ、という不審で不快で、最悪な相手を見る目を向けられたとさ。

分かっていた。


ので、エルフ三人ほど盾にしておいた。

一人でのこのこ行くわけないじゃん。


嫌悪さえ感じられる表情にエルフ達はといえば。


「な、見てよっ。私を見てるわ?」


「おいおい、ぼくを見てるんだ。決まってるだろ」


「違うわっ。こっちと目が合ったのよ。あの鋭い目を見た?なんて可愛いの」


憎悪の顔をモノともせず、可愛いと言い切る感性は永遠に分からない。

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