タイトルの勢いに負けない“手軽さ×恋と成長”の発明である。お湯を注ぎ、食べ終えると美少女が現れる——ただし滞在は3分、1日1人限定。カップ麺的な儚さとギミックが一体化し、醤司油子が〈3分限定/1日1人/待ち時間やトッピングで“属性変”〉を軽快に解説する導入で一気に惹きこまれる。
“属性変”とキャラの一致が快い。味噌の味咲噌花は2分+バターで「まろやか後輩」に。振袖とお茶・和菓子、最後の抱擁まで、3分の癒しの配合が隙なく決まる(“早茹で”で幼めに寄る調整も小気味よい)。
塩の塩谷分美は4分+メンマで「一本芯の通った先輩」へ。数分でセーターを編み上げ、淹れたてコーヒーとサンドイッチでもてなす“包み込む先輩像”が、塩味のさっぱり感と見事に重なる(トッピングの混ぜすぎで味がボケる、という注意が物語内ルールとして利いている)。
豚骨の頓野骨奈は、唐辛子+バターの組み合わせでツンデレ風味が立ち上がる。濃厚さと陽気さの両輪で押し切りつつ、「……軽く考えるのは、私に対してだけにしておきなさい」という一言が芯の強さを示す。
ギミックにとどまらず、物語の芯は“手軽さ”と“本当に大切なもの”の対比だ。尚の「物臭と冷たいは違う」、姫花の「寂しい」の一言が胸に刺さり、主人公の“手軽志向”の背景(習い事で浮き、報われぬ経験の積み重ね)が静かに輪郭を得る。
そして核心の告白へ。油子は「私たちは、面倒を遠ざけるご主人様をどうにかしたいという想いが生んだ存在」と語り、「本当のおさななじみだったら良かったのにな」と残して消える。その直後、インターホンが鳴り、現実が扉を開く。
ラストの『姫花味』では、姫花が「物臭でもいい、ここぞで少し頑張って」と手を差し出し、主人公が「姫花と一緒の時間は面倒じゃない」と言葉で応える。3分の甘美な“インスタント”たちが、ふたりを“本物の関係”へ背中押しする——仕掛けとドラマが噛み合った読み心地の良い6話である。ここグラさん、優しくて楽しい魔法をありがとうございました。次作(あるいは後日談)も喜んで啜ります。
追伸
以前の拙いレビューは破棄しました。内容精査が足りず、ご迷惑をおかけしました。改めてお詫びします。