#5 決意と迷いのインターリュード

 泣いたことで気分が落ち着いた私は、その後はお茶会を楽しんでお開きまで皆さんの話をあれこれ聞いていた。


「さて、お開きにするですよ。十さんは私が家まで送ります」

「はーい、お姉さんとデートだね! コンビニ寄ろうよ」


 四方田先輩が十さんを連れて退出。……十さんのキャラが違うような。


「恵、ちゃんと帰ってきなさいよ。さ、美海もすぐそこだけど送ってくね」

「そこまでしなくてもいいのに。もう」


 西先輩が須川先輩の手を握って退出。クールなイメージの須川先輩が照れていたのが印象的。


「燐、帰るわよ」

「うん。では、ご機嫌よう」


 夜ノ森さんとは一応打ち解けられたかな。赤石先輩はなかなか喋ってくれないけど。


「かおり、迎えに来たわよ」

「紅葉ちゃん!!」


 北川先輩は日本人形みたいな美人さんに連れられて帰って行った。ということで、今は蓮園先輩と二人きり。泣いていた時に抱きしめられてからなんだかちょっと話しづらいというか、先輩たちのいちゃいちゃを目の当たりにしたせいか……やっぱり恥ずかしい。


「どうしたの? 帰ろ?」

「は、はい、ですね」


 小学校六年間ですら恋に触れたことのない私にだって、人並みの恋愛観というか王子様希望な一面があって……。女の子同士であっても、それがその人にとっての幸せなら外部からどうこう言っていい話しじゃないし……うちはうち、よそはよそというか……、別に蓮園先輩を意識する必要はないっていうか……。


「ともちゃん」

「はひ!?」

「……そんな驚くことかな。いや、あのさ、自分に自信がないからって今までやってこなかったことに挑戦したら、自信に繋がるんじゃないかなーってちょっと真剣に考えてみたんだよねー」

「な、なるほど。これまで避けてきたこと……」


 一番に思い付いたのが部活だ。フルートを吹くのは好き、でも星花の吹奏楽部はけっこうな強豪校だし、私みたいなのが行ったって……。やっぱり自信ない。


「部活のこと考えてるら?」


 訛りの入った問いかけに、私は頷く。フルートは好き、見学に行ったときだって先輩達は優しそうだった。人が多いってだけで去るには勿体ない場所なのは分かってる。


「バド部ってさ、人は多めだけどあんまり強くないんだよね。練習もぬるくってさ。ひーちゃんはバドミントンが好きでやってるから、何か物足りなくて。でも辞めるのももったいなくて。ともちゃんはさ、部活を続けることでもっと上達できるんでしょう? だったらさ、行ってみなよ。ひーちゃんはそう思うかな」

「……先輩」

「なんてね、あんまり真面目に考え過ぎちゃだめだよ。またね」


 気付けば菊花寮の目の前にいた。手を振って入っていく先輩の背中を見つめながら、私も寮に入っていった。

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