第45話 急展開
そして、なんやかんやあって、俺は外に出た。
「はぁ、面倒事体質か……」
「ハ、ハース様……!」
「あれ?
フェンリアル、それにみんなまで。
こんなところに集まってどうしたの?」
外に出た俺を待っていたのは、獣魔隊の隊員たちだった。
しかし、よくよく見てみるとそこにいるのは女性隊員のみ。
それに気づいた瞬間、身体がビリビリと痺れ、すごく嫌な予感がした。
「ねぇフェンリアル、どうして黙ってるの……」
俺は、1人先頭に立つフェンリアルに声をかけた。
すると、フェンリアルは顔を上げ、こう答えた。
「ハース様、すいませんガウ」
「え?」
「私も1人の女の子として、夢を全力で追いかけたいガウ!」
その直後、フェンリアルの目がハートに変化した。
「フェンリアルの目がハートに……」
そして、そのフェンリアルの言葉を皮切りに、獣魔隊女性隊員による猛追が始まった。
「私と結婚してください!」
その中には、あのオクトの姿もあった。
うーん、オクトなら悪くないかも……。
って、あほか俺は!
「ねぇ、ちょっと落ち着いて!
おーい、聞こえないのー!」
大声を出し、正気に戻そうと試みるが、これといった効果はない。
となれば、もうこれしかないよな……うん。
「よしっ、逃げよう!」
俺は魔王城裏側へと走った。
「ハース様ぁぁぉあああああ!」
ただ、流石は獣魔隊隊員。
全く疲れる気配がないのもそうだが、俺にピッタリ付いてきている。
「ふぅ、これで500回目と」
それに対して、俺は何度も何度も魔王城を回り、屋根を登っては降り、飛びかかってくる隊員たちをいなし続けている。
このままでは、いずれ疲れ果てて捕まるだろう。
「あぁもういっその事、空間転移でどこか遠くの島まで飛んじゃおっかなぁ」
その時だった。
「ハース様、こちらです!」
「この声は……レオルか!
おいレオル、どこだ、どこにいる!」
「ハ、ハース様が俺様の名前を呼んでくれてる……。
じゃなくて、ハース様、俺様たちは下です!」
「下!?」
「それと、この穴は長く持ちません!
さぁ、早くこちらへ!」
声のする方に目を向けると、綺麗に手入れされた玄関前の芝生に、ゴルフカップのような穴が1つ、ぽっかりと空いている。
「えっ、これに入るの……」
「ハース様……もう、持ちません……!」
レオルは自身の力をフルに使い、全力で穴を広げてくれている。
「あぁもう、分かったよ!
えーい、どうにでもなれー」
俺は無心で穴に飛び込んだ。
そして、俺が中に入ると同時に、その穴は姿を消した。
「よいしょ」
着地する瞬間に空間転移を使うことで、俺は華麗に着地を決めた。
「おぉー!」
パチパチパチパチと拍手で褒めてくれる彼らは、獣魔隊の男性隊員たちである。
「ハース様、この度のエモーラ認定、おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「あっ、どうも」
人間は褒められると嬉しい。
これは当然である。
だがしかし、この時の俺は、『エモーラ』という魔族階級にうんざりしており、特に喜びを感じていなかった。
そのため、このような超薄いリアクションしか出来なかったのである。
ただ、それだけなのに……。
「おい見ろよ」
「あぁ、流石はハース様だぜ」
「エモーラと言えば、魔王様以外は絶対に選ばれることのない」
「幻の階級とか呼ばれてるのに」
「平然としていらっしゃる」
「うぉぉおおおおおお!」
と、まぁこんな感じで、あらぬ誤解を生んでしまったのである。
うーん、これも面倒事体質の弊害と言えるかも……。
「ハース様……あれ?
ハース様?」
あぁ、なんかもう考えること多すぎてムカついてきた。
はぁ。
無意識に魔力が高まっていく。
「ハース様いけません!
このままでは、地下通路が潰れてしまいます!」
地震のようにグラグラと揺れる地面。
「はっ……!
ごめんごめん。
ちょっと考え事してた」
危ない危ない、生き埋めになるところだった。
1回落ち着いて深呼吸をしよう。
スゥーーーハァーーーー。
「いえいえ、俺様の話しかけるタイミングが悪かったです」
何も、そこまで自分を下げることないのに……。
いや、今はいいか。
「それで、話って?」
「はい。
これは俺様たちの総意なのですが……」
「ん?」
レオルの表情が少し歪んでいる。
これは、何か重要なことを言おうとしているに違いない。
さぁ、何が来る……ドキドキ。
「獣魔隊を解散するべきだと思います!」
「……へ?」
なんかえぐいの来ちゃぁぁああああ!
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