私の配信に憧れて、新たに女の子がパーティに入ってくれました
川野マグロ(マグローK)
あなたが新人さんね?
「
「ええ。よろしく」
「ふわぁ! 本物だぁ。あ、あの。終わってからでいいのでサインとかって……」
「いいわよ。でも、これからは同じパーティのメンバーになるんだから対等の関係だってことを忘れないでね」
「そんな、対等な関係なんてできませんよ。でも、ザイアさんはこれから上司のようなものだし、うぅ……」
「ま、焦らずゆっくりでいいわよ」
「はい! なんて優しいんだ。あっ、つい声に」
「ふふっ。面白いわね、あなた」
「いやぁ、へへへ」
金髪のサイドテールを揺らしながら興奮気味に落ち着きなく動いている目の前の子は古賀凛ちゃん。
今日から私のパーティに参加することになった女の子だ。
こんな風に私のことを配信で知ってくれている子が入ってくるのはもはや珍しくもないけれど、ここまで隠さない子は初めてね。
「それじゃやっていきましょうか。今日はパーティ全員で探索をする前に凛ちゃんがどれくらいできるのか確かめさせてもらうわ」
「ザイアさんに見てもらえる日が来るなんて思ってもなかったですけど、頑張ります」
「よろしくね。頼りにしてるわよ」
「同じパーティのメンバーって、まだ現実感ないんですよね」
「大丈夫よ。そのうち慣れるから。それじゃあ、後ろから見てるから普段してるように探索を始めてちょうだい」
「わかりました!」
凛ちゃんは堂々とした足取りでダンジョン内を歩き始めた。
声も出ているし、笑顔も絶えない。
ダンジョンの探索自体には慣れている様子で、これならすぐにパーティでの連携にも慣れてくれそうだ。
ただ、懸念点があるとすれば私のことをチラチラとうかがっていることと、動きがまだ固いこと。
モンスターの気配を察知したところで、私は凛ちゃんの後ろから顔と腕に触れた。
「ひゃあ!? ザイアさん? こ、これはよろしくないと言いますか。それにあの、モンスターが見えてます」
「まだ大丈夫よ。緊張しなくていいわ。力を抜いて。無駄な力はケガのもと、それにあなたの経歴からして、ランクが1つ低いこのダンジョンなら振り抜けば倒せる相手よ」
「は、はい……」
触れていると呼吸が落ち着いてきたのが手に取るようにわかる。
体の力もいい具合に抜けてきて、すぐに動いても問題なさそうな程度に体の連動が自然になっている。
うん、これなら準備運動くらいは始められそうね。
「じゃ、やってみて」
「……はい」
私が離れると、凛ちゃんは流れるように走ってきていたリザードマンを一刀両断した。
武器をしまうまでの動作にも一切の無駄がなく、実力の100%を発揮できているようだ。
「す、すごい。いつもより楽に倒せちゃった」
「ふふっ。それはよかった」
「何したんですか? わたし、なんか特別変わったことはしてないんですけど」
「そう。特別変わったことなんて必要ないのよ。今日まで頑張ってきたことを見たいんだから。よかったわよ」
「ザイカ様からそんな恐れ多い言葉、あ、ああ、ありがとうございます!」
「普通にしてって。まだ始まったばかり、これからじっくり見させてもらうから」
「はい!」
準備運動も終わったようで、凛ちゃんの動きが格段によくなった。
今クランに入れるくらいだから相当な実力者だってわかってたけど、こうして見せられると驚くわね。
それにしても、憧れてるなんて言ってくれる子は本当に利用しやすくて助かるわ。
配信で名前と顔が売れてから、私のことを配信で知ってクランに入るから、私のパーティに志望してくれる子の多くて助かるのよね。
しかも、配信で見た私を信じてくれてるから素直に言うことを聞いてくれるし、私のため努力も惜しまないしいいことづくめだわ。
本当、持つべきものは従順な犬ね。
なんて。
私の配信に憧れて、新たに女の子がパーティに入ってくれました 川野マグロ(マグローK) @magurok
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