第13話  幽霊の城

「当り前だろう。ここはテーマ・パークなんだから」とパズルと僕は苦笑するしかなかった。

 と、パズルが、あれを見ろ、と前方を指さす。見ると、奥の方に小さな点のような明りが見えた。

「窓だ」と僕は言った。

「いや、違う。だって、明りが揺れている」とパズルが言った。

「なんだろう?」とセブ。

 明りは揺れながら少しづつこちらに近づいて来る。

「こっちに近づいてくる」と僕は言った。

「人魂?」とセブが怯えたように言う。「でも、ここは魔法ランドだよね」

「そう。お化けがいてもおかしくはない。どんなアトラクションなんだ?」とパズルが目を凝らした。

「幽霊の城ってとこかな」と僕は言った。

 明りは足音を立てながら徐々に近づいてくる。薄っすらと人の輪郭が見えてきた。それがはっきりすると、男だった。闇の中から現れた男は僕らの姿を見ると、唖然とした顔付きをして立ち止った。男は首からカメラを提げた、小太りでメガネに無精ひげを生やした四十がらみの男だった。七分のズボンに登山靴を履き、厚手のネルのシャツを着ていた。頭にはヘルメットをかぶり、ヘッド・ライトを点けていた。背中には大きなリュックを担いでいる。まるで、洞窟探検にでも行くかのような出で立ちだった。

「君たちは一体、何者なんだ」と男は僕らを見て驚いて言った。

「しかも、そんな薄着で。ここは標高1500メートルもあるんだ。それに風も強い。天空のレジャー・ランドが廃れた原因の一つさ。今日は穏やかな天気みたいだが……」

「おじさんこそ何者なんです」とセブが言った。

「僕か…、僕はここで廃虚めぐりをしてたんだ。今ね。廃虚マニアの間では、廃虚になった天空のレジャー・ランドを探検するのがブームなのね。デジカメで撮影してブログに載せるんだ。ところで、君たちはどうやってここまで来たんだ?」

「ポッドです。河原に捨ててあったやつ」とパズルが答えた。

「そんなもので……」と男は呆れたように言った。「危ないから子供はすぐに帰りたまえ。建物が崩壊して下敷きになっても知らないぞ」

「おじさんだって危ないじゃないか」とセブが言った。

「おれはちゃんとこうやって水も食料も持って、装備をして、下調べもしてきているからいいの」と男は少しムッとして答えた。

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