約束の丘で
成城諄亮
あらすじ
特別養護老人ホーム
幼少期から周りとうまく馴染めず、常に弄られてばかりの瑛斗。小学4年生の時に起こした事件がキッカケとなり、瑛斗の両親は離婚。その日以来、瑛斗は母親と共に、祖母の家で暮らしている。
そんな瑛斗のバイト先である特別養護老人ホーム晴葉菜に入居している一人の老人、土井衛吉(88)は、性同一性障害をもちながらも、定年まで刑務官として刑務所に勤務していた。土井は毎日メイクをし、女性ものの服を着るなど、全面に女性であることを醸し出す人物。そして、瑛斗の良き理解者として、誰よりも優しく接する。
土井に対し、自分の過去の話を赤裸々に語る瑛斗は、知らず知らずのうちに土井に対して心を許していた。
バイトを始めて2か月が経過した10月のある日、瑛斗はクラスメイトから浴びせられる悪口に耐えられず、学校を抜け出し、晴葉菜に駆け込む。そして、いつも通り介助をする中で、土井の過去話を聞いた瑛斗。
その後、土井からの唐突なる質問に悩む瑛斗だったが、昼食の時間、話の最後として、土井から「看守になって欲しい」と願いを託される瑛斗。そのときは笑っていた。もちろん、瑛斗は、この会話が土井と交わす最後のものになることを知らないで。
そして10年後、土井の願いを叶え、看守になった瑛斗は、花束を抱えて、雲ヶ丘にある霊園を訪れる。土井の眠る墓石の前、瑛斗は、土井に対する気持ちを告げるのだった。
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