【KAC20252 特別編SS】あこがれ
宮沢薫(Kaoru Miyazawa)
あこがれ
「あら
「先輩の席、空いてる。座ってもいいっすか?」
宇佐美と呼ばれた女性は、鈴音がうなづくと向かいの席に座った。鈴音のことを先輩と呼んでいるが、十歳以上の差がある。胸元を見ると、宇佐美はモノトーン系が多い中、珍しく淡いピンク色のフリルブラウスを着ている。たわいのない近況話に花を咲かせた。
ふと、宇佐美が梅おむすびの最後の一口を頬張ってから鈴音を直視した。
「そういえば、あたし、阿部さんみたいになってますか?」
「え、なんのことかしら?」
「その、一次面接で阿部さんと初めてお会いした時、『あたし、この人みたいになりたい』とあこがれを抱いたんです……そして、ご縁があって入社して頑張ったんですが、働きぶりはどうかなって」
鈴音は一次面接で宇佐美と出会った時のことを思い出した。
宇佐美
「あれからバレーはどうなったの?」
「……選手としては引退しましたが、今でも母校が出ると応援しに行ってますよ。大声出してストレス発散です! それと先輩から教わったトリの降臨お守り、後輩から人気ありますよー!」
トリの降臨お守り。この辺には
鈴音は口に手をあてて、目を細めた。
「うちは鳥越神社じゃなくて、神田明神の氏子ですよ」
「えー、そんなぁ。うちの会社の守り神と思ったんだけどなぁ」
宇佐美は豆鉄砲を喰らった顔を見せた。その顔を見て、鈴音もつられて笑ってしまった。
なにもかも鈴音に憧れてマネる必要はない。宇佐美は宇佐美らしく、自分を大切にして社会人生活を迎えてほしいと思う鈴音であった。
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