あこがれとトリの降臨
星見守灯也(ほしみもとや)
あこがれとトリの降臨
あこがれのアフターヌーンティー!
紅茶とサンドウィッチにケーキの華やかな写真に目が止まった。
なんと今日は予約なしで入れるらしい。
「ああ、いいなあ……!」
思わず財布の中身を思い浮かべる。うう……ちょっとキビシイかも。
(いいじゃない。美味しい紅茶……たまにはごほうびよ)
「そうだよねえ。紅茶にケーキにスコーン……優雅でいいよねえ……」
悪魔がささやく。前から、一回は行ってみたいと思ってたのだ。
お姫様のように紅茶を楽しむ。スコーンにクリームをつけて……ああ、なんて至福の時間!
(待ちなさい。明日から毎食食パン一枚になるでしょ!)
「そうだよねえ。さすがにちょっと……」
天使が叫ぶ。今すぐぽんと出せるお金じゃないなあ。
それに、できるならこんな服じゃなくて綺麗なのを着て楽しみたい。
(ダイエットだと思えばいいんじゃないの?)
(ちゃんと食べないとダイエットにならないのよ!)
でもなあー! そんなことを考えながら、店の前を行ったり来たり。
完全にあやしい人だ。優柔不断すぎる。
(ほら、本来なら予約が必要な店じゃない! いつも混んでるし、今日じゃなきゃ!)
「そうだなあ……」
(後で予約して来ればいいじゃない。焦らないで!)
「そうだよなあ……」
(食べたい時が食べる時でしょ!)
(本当に今必要なのかよーく考えるのよ! 節約しなきゃって言ってたでしょ!?)
「ああ、助けて! 神さまーーーー!!」
そのとき、むこうからスパイシーな匂いがただよってきた。
むかいのファーストフード店だ。瞬間、脳裏に神が降りてきた。
(トリです。トリを食べるのです……!)
トリの降臨であった。
神々しくも油をまとったトリであった。
(おいしいですよ。皮はパリッと、なかはジューシー! 噛みしめれば肉汁があふれ、スパイスの香りが口いっぱい広がるのです。肉は柔らかくて甘く、じつにうまい! さらに一口、ガブリといけば、もう止まらない……!)
トリは告げた。ここにフライドチキンあれ、と。
「やっぱ、ケンタッピーにしよ!」
(ええ、紅茶は!? ケーキは!? スコーンは!?)
(またムダ遣いしてー!! 明日からどうするのー!?)
悪魔と天使が頭を抱えたが知ったこっちゃない。
食べたい時に食べたいものを食べたい。それがあこがれの人生だ。
「だってもう、お腹がトリの気分なんだもん」
あこがれとトリの降臨 星見守灯也(ほしみもとや) @hoshimi_motoya
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