第2話
私を見降ろす姿に後ずさって背中に壁を感じる。
その衝撃に振り返りたいのにそれすら許さない眼差し。
ああ、彼と一緒。
そして意地悪く微笑むその表情も類似する。
「君を誘拐した理由…分かる?」
耳を疑うべきだろうか?
入りこんだ言葉にゾクリと危険を感じ、表情が強張ったのを自分で理解する。
ごくりと飲み込んだ唾の音を聞きとったのか、その姿が口元の弧を強めて顔をグッと近くに寄せてくると。
「俺を誘拐して…」
「……はい?」
間の抜けた声を響かせた理由は2つ。
まずは私はこの男に誘拐された状況という事。
2つ、誘拐したこの男は私の婚約者の歳同じ叔父さんに当たるのだ。
「誘拐…ですか?」
確認の意味もあり声を控えめに響かせれば、その通りだと微笑む姿に誘拐という言葉の意味を真剣に考えてしまった。
それが私と彼の逃亡生活の始まり。
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