レッド殺人事件
赤衣カラス
PROLOGUE
伝説の始まりと終わり
宇宙の果て、遥か彼方の銀河系にオーダー星という名の生命豊かな惑星が存在した。オーダー星は、広大な宇宙の中で一際美しく輝き、その緑豊かな大地と澄み渡る空は、多くの生命を育む楽園として知られていた。その美しさと豊かさは、他の惑星の住民たちにとっても羨望の的であり、憧れの地であった。
オーダー星を統治するのは、高潔で優しい心を持つ王族たち。彼らはその知恵と慈悲深さで、星の住民たちに敬愛され、平和と繁栄をもたらしていた。教育や文化も栄え、失われた古代技術を解析した科学技術によってオーダー星は多方面において他の惑星を凌駕する存在であった。
しかし、この楽園にも暗雲が立ち込める時代が幾度となくあった。オーダー星の龍脈を巡る、オーダーエナジー。大昔、王族の先祖が宇宙精霊と契約したことから生まれた無限の可能性が秘められたエネルギーだ。
オーダーエナジーは、その膨大なエネルギー量と無限の応用力により、オーダー星人たちの生活を支えていた。
宇宙全体でも類を見ないほど希少かつ利用価値のあるエネルギーである。無限大の汎用性と利益を生み出すそれは、悪しき異星人たちの欲望を掻き立てずにはいられなかった。歴史上、数えきれないほどの異星人たちがオーダー星を襲ってきた。
しかしその度に
『古の時代、オーダー星、未曾有の災厄に見舞われたり。邪悪なる巨悪、その地を蹂躙し、民は恐怖と絶望の淵に沈みたり。斯くして、勇猛なる王は毅然と立ち上がり、凶悪なる敵に対峙せんと決意す。
されど、その巨悪の力、誠に測り難く、王は次第に劣勢を強いられけり。王の力、尽き果てんとするその時、五人の戦士、立ち上がりたり。
彼らは力を合わせ、王と共に戦い、遂に巨悪を討ち滅ぼしぬ。民は再び平和を取り戻し、その勇敢なる戦士たちの名、永劫に語り継がれん。
ファイブオーダー、王はその名を希望と勇気の象徴と称す。以来、星が危機に瀕すとき、王のもとに五つの秩序は必ず現れる』
時代が変わり、人が変わっても、その伝説は不変。彼らは惑星の危機と民の叫び声に応えるように現れては、王の隣に並び立ち悪を討つ。その勇姿と活躍がオーダー星人たちに希望を与え続け、立ち上がる勇気をもたらしていたのだ。彼らの戦いの記憶は世代を超えて語り継がれ、オーダー星の生ける伝説となっていた。
しかし十四年前、オーダー星はかつてない危機に直面することとなった。暗黒銀河盗賊団・ダークマターが襲来してきたのだ。
暗黒銀河。宇宙で最も光の少ない銀河系。惑星間はおろか、惑星内でも苛烈な生存競争が繰り広げられており、同じ惑星出身の同種族でもまるで異なる形質・性質を持つ生命体になってしまう。ダークマターはそんな暗黒銀河においてもはぐれものとされる様々な異星人が集まって構成された宇宙盗賊団。銀河系の中でも取り分け過酷な環境で育ってきた凶悪にして冷酷、無慈悲な集団。彼らによって、星王と戦士たちは敗れ去った。
オーダー星の戦力がダークマターよりも劣っていた、ということではない。闇の力を操る彼らとオーダー星という惑星の相性が悪かったのだ。
惑星は荒らされ、美しい自然は荒廃し、かつて栄えた都市は廃墟と化した。ダークマターの支配によって住民たちは絶望の淵に落とされた。指導者も戦士もいない。滅亡したと言っても過言ではない惑星と化したのだ。……古代より続いていた伝説が終わった瞬間である。
伝説の終わりはすなわち、オーダー星の、戦士たちの、王の敗北を意味するのだろうか? 否だ。新たな物語が既に始まっている。オーダー星より遠い遠い銀河、太陽系の第三惑星……オーダー星に勝るとも劣らず美しい青い星、地球。
今まさに、ダークマターの侵略を受けているこの惑星にて、彼ら彼女らの意志を受け継いだ若者たちが母星を守るために戦っている。
これは、遠い彼方の伝説を引き継いだ若者たちの物語である。
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