第3話 その前日(4月19日)①フードコートにて

 村田桂子が住んでいる町には大手チェーンのスーパーが5店舗ある。

桂子がパートで務めているスーパーはその中で1番大きく、フードコートや小さい子向けのゲームコーナーやなんかが入っている。

子供たちが小さかった頃、日曜日に雨が降ると、桂子は子供たちを連れてよくこのフードコートに来ていた。働いている人たちの顔つきが穏やかで居心地がよかったからだ。

 次男が小学校に入ってすぐ、桂子はこのスーパーにパートにでた。自分で働いてみてもやはり居心地の良い職場だった。時給はほとんど上がらなかったが、次男が大学生になった今でもまだパートのままでこのスーパーに勤めているのだった。

 

 桂子は仕事帰りにフードコートで抹茶ミルクフラペチーノを飲んでいた。

そして桂子はさっきから、2つ離れたテーブルこそこそ話している地元の中学の体操着を着た2人が気になって仕方なかった。


「あれほんとかなあ?」

「どうだろう。」

「ほんとにやるかなあ。もう明日だよ。」

「やるかあ?殺人だぞ。」

「違うよ自殺だよ。」

「それでもさあ。いくらなんでも頭おかしいだろう。」

「それは思う。」

「それにさ、俺思ったんだけど、あいつらはっきりそうは言ってないんだよね。」

「え、そう?」

「たしかさ、ほら、子羊はその身を投じて世界の安定と平和を図るとかなんとか。」

「うん。」

「殺人事件とか言ってるの俺らの中学だけじゃね?」

「あれ?」

「明日の夜の配信見てさ、ただの釣り広告だったってことになるかもしれないよ。」

「そうかなあ。でもやっぱり配信見たいなあ。見れるやつはいいなあ。」

「お前見らんないの?なんで?」

「前言ったじゃん。俺んち夜9時過ぎたらスマホ親に預けんの。」

「あーそっか。」

「明日さあ、家に泊まりに行っていい?親には勉強会って言ってくるからさ。」

「さすがにうちもそれはちょっと。あ、でもそうだな。俺も親にお前んちで勉強するって言って出てくるからさ。駅前のマックで一緒に見ようよ。」

「ホント?お前いいやつだと思ってたけど、通り越して神。」

「今日は親が見てるとこで勉強しとくわ。1人じゃもう無理って感じ出しとく。」

「うーわ、俺もそれやっとく。」


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