第2話 知り合いのアイドル
ヨカゲシノブ。
もといシノブからの連絡内容はいたってシンプル。
[相談したいことが有るから、電波届くところにヨロ]
それだけの内容が、わざわざ彼女のプライベート専用に用意されたチャットサイトで掲載されていた。
大げさなことに見えるが、彼女のプライベートは今や国家どころか世界のトップシークレットと言ってもいい。
もっともそのことは、今は特に関係ないから語る必要はないかな。
わたしは素早く周囲を見回す。
監視カメラが有るのは分かっているから、自然に端末の画面が写り込まない位置へ移動する。
そして、暗号回線を開きサイトへアクセスする。
シノブが送ってくる際は、暗号化など気にしなくてもいいのだけど、わたしはこの手のことに関しては一般人なので、守秘義務の有る場合は必ず会社が用意した暗号回線を使用することにしている。
暗号回線は送受信するデータが膨大になり、かつ暗号化と復号化により端末に負荷がかかるので通信速度が遅くなるのは難点。
でもシノブの場合は問題ないか……。
ともかくわたしは、シノブへの返信を返す。
とっても単純な一文だけ。
[電波通るとこに戻ったよ]
それだけを送信すると、すぐに着信。
ディスプレイには『Caller unknown』の表示、つまり発信者不明。
もっともこの端末は未登録者から通知は全て遮断しているのでこんな表示が出る相手は決まっている。
なのでわたしはすぐに応答した。
「はい、シノブでしょ?」
[なんだ、面白くない]
わたしの即答に不満そうな声が返ってくる。
そりゃ、クラッキングもせずにこんな芸当ができるのは一人だけだからね。
「それで、何のよう?」
わたしはぶっきらぼうに返す。
わたし達は知人だけど、まだ友達とは言えるほどは会っていない間柄。
強いてい言えば『知り合い』なのだから。
[昨日からあなた、少し有名になっているから気になってね]
わたしの問いかけに、シノブはそう切り出した。
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