いやあ、面白かったです!!
渋い!!
俳優は、引退時期がないのです。しかも割と年いってる俳優というのは、
そこまで生き残ってきた、続けてきたものだから実力もプライドもあるのでしょうな。
かれこれ30年以上舞台俳優を見てきていますが、舞台俳優が成熟するのは明らかに40過ぎです。
主人公は、60代後半まで舞台俳優をされているということで、これはもう、重宝されるわけなんですよ。
むしろ脂が乗ってる時期なので。
2、5次元の世界は知りませんが、だから舞台俳優はいつまでも引退しないのですよ。
だので、信長君の言っている言葉もわかるし、
非常に内容に共感できました。
いやあ、すごい……。
めっちゃおすすめです!!
ご一読を!!!
地元演劇団のベテラン俳優のお話しです。
若い時分に舞台俳優の夢を追い、破れて名古屋に帰ってきた主人公が出会ったのは、地元の名古屋武将隊。そこで平手政秀という当たり役に出会い、充実した時間を過ごします。
しかし寄る年波には勝てない。舞台稽古で倒れ、己の体力の限界を悟り、若手俳優の成長も手伝って、最後の舞台に臨む決心をします。
スナックのユキちゃん、信長、慶次、などなど、魅力的な脇役たちに支えられ、最後に、一世一代の名演技を披露できるでしょうか。
時間は公平に流れ続ける。盛者もいつかは衰える。しかし、確実に次代に繋がっていく。舞台から去るのは悲しい事ではない。
人生というものを考えさせられる、味わい深い好編でした。
やはり老齢のプロフェッショナルには、相応の人生経験が積み重なり、熟成された哲学のようなものが宿るのが実に渋いですね。
そしてその落ち着いた経験から、若く戸惑う大役を任された役者に助言をするというのもまた実に味わいがあります。
ただ、いちいち小難しい話になってしまって、通じてないのはご愛敬。
しかし、どれと同時にその体には脆さも宿ります。
騙し騙し鞭打ってきた老体もついに限界を迎え、遂には役目を終える時が迫ります。
その最後に無事有終の美を飾ることができるのか。
限界に挑む男の最後の一幕が始まります。
いぶし銀役者のその集大成、とくとご覧あれ。
人それぞれに舞台があり、懸ける思いがある。
そして、舞台に立つ時間には、やがて終わりがくる。
ナゴヤ武将演舞隊の一員、平手政秀の演者は次回の公演で、その役を降りようとしていた。
加齢による身体の衰えがその理由だった。
本作は彼が最後の舞台を務めるまでの物語である。
作中で語られるのは平手政秀だけではない。
ナゴヤ武将演舞隊の演者である織田信長、前田慶次にも言及されている。
彼らもそれぞれの人生を歩み、時に反発する。
各人各様の葛藤を抱え、それでも役を得た者たちは、舞台に立つ。
舞台の上では、その人だけが、その役を演じる。替わりは誰もいない。
集まった観客は、彼らに戦国時代の武将の姿を見るのだ。
一幕一舞台とて、疎かにできるはずもない。
舞台がある限り。
そこに集う観客がある限り。
夢や思いは継がれていくのだろう。
紆余曲折を経て辿り着いた場所で、その務めを全うした演者の生き様が描かれた本作。
演者の終え方だけでなく、御当地アイドルの幕引きの有り様やその舞台に懸ける心情をも丁寧に表されている優れた作品でもある。
ぜひ御一読されたし!