高校受験の際、特にこれといった目標がなかったのもあって、なんとなくと紗英姉と同じところを選び、さほど苦労せずに合格した。そうしていざ通いはじめれば、幼馴染が恋多き女として名を馳せていた。

 人ってまずは見た目で判断するからね。

 そう口にしたこの頃の幼馴染の家には、ファッション誌が転がっていて、そうした反映が髪の色や薄らとした化粧、鞄に付けられた動物のキャラのアクセサリーとして出力されていた。教師にはちょくちょく注意されていたものの、生徒たちからの受けは良かったらしく、校内で見かける時の紗英姉の周りには男女問わずたくさんの人が集まり、輪の中にはその時に付き合っている彼氏がいることが多かった。そして前もって触れたように、紗英姉はけっこうな頻度で付き合ったり別れたりを繰り返し続けていた。


 別に変えたくて変えてるわけじゃないんだけどね。

 ある夜、紗英姉は自分の家の台所で鍋の中で芋を転がしながら、半ば愚痴るみたいにして、多くの恋の顛末について語った。

 どうにも上手くいかないんだよね。こっちは毎回、いつまでも続けるつもりで付き合うのに、付き合ってるうちに段々、向こうが引いていっちゃって、最後には別れようって言われるの。

 不思議だよねぇ。どこか寂しそうに口にする紗英姉に、そうだね、と応じつつ、付き合っていたやつらは本当に見る目がないな、なんて思った。せっかく付き合えたのに、なんで手を離してしまうのか? 当時の俺には理解が及ばなかった。

 まだ続けるの?

 質問にたいした意味はなかった。いや、もしかしたらこの後に、俺にしといたらとでも付け加えたかったのかもしれない。とにもかくにも聞いてみた俺に、

 うん。

 紗英姉は迷うことなく頷いた。

 相手を見つけないことにはお嫁さんになれないからね。

 幼馴染の答えはひたすら合理的であり、それでいて、鍋から外れた視線はここではないどこかを見ていた。

 そっか。

 震える声を抑えつつ、眼中にすらない、ことを実感する。所詮、近所に住む、親しい年下のガキでしかないのだと。

 どっかにいい男いないかなぁ……。

 愉快そうに、それでいて寂しそうな声音に、手をあげる勇気もなく、ただただ、みつかるといいね、なんて心にもない言葉を吐くしかなかった。

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