第1回お題「ひなまつり」KAC20251

三雲貴生

第1話「ひなまつり」

 私の名前は木下歌子。8歳の娘を持つ30代の主婦です。


 ひなまつりは私や娘にとって、とても楽しい行事だけれども、ひとつ大問題があります。


 それは「ひな人形のお仕舞」です。


 誰が言い出したのか? 「ひな人形を仕舞い忘れると婚期が遅れる」と言い伝えられます。


 全く迷信よね? ちゃんと統計採ったとかしら? 自分ことなら無視する迷信なのだけれども、娘がいます。


 娘の名前は、舞、8歳。


 自分の不始末で娘の婚期を遅らせる訳にはいきません。


 でも問題は8歳の娘に「婚期が遅れると大変だから、ひな人形のお仕舞しましょうねー?」と言えますか?


 私の実家では、ひなまつり3日後つまり「3/6」にひな人形のお仕舞をします。


 さあ娘とのガチ勝負です。


 正月のおせちの残りをどうするか、旦那とバトルした以来の大勝負です。(結果、旦那に全部食べてもらいました)


 ひな壇を神々しく見上げる娘に話しかけます。


「舞ちゃん」


「なぁにぃ?」


「舞ちゃんはいくつ?」


「はっさい」


「ひな人形は婚期を左右する⋯⋯んん⋯⋯迷信の⋯⋯んん⋯⋯。舞ちゃん。ひな人形をお仕舞しましょう!」


 当然、嫌がる娘。話題をかえてみた。


「舞ちゃんは将来、なんになりなりたいのかな?」


「んーとね。おひなさま!」


 おしい。答えに「お嫁さん」が欲しかった。そしたら「お片づけのお勉強しましょうねー」と続けたかったのに。


「舞ちゃん。おひな様の隣に居るのは誰かしら?」


「おだいりさま?」


「舞ちゃんのおだいり様はお仕舞の上手な人が好きなのよ?」


「おしまい?」


「そうそう、ひな人形のお仕舞しましょうね?」


「いやーだっ。ずっとみていたいのー」


 ずーっと観ていたら。あなたこの家でニートになって私にお世話される未来しか見えないわ。


「じゃーしよーらいは、ひなにんぎょうやさんがいーいー」


 それは名案だ。趣味と仕事が両立する。


 一向にひな人形のお仕舞が進まない。ここはパパに手伝ってもらおう。


「パパが帰ってくる前にお仕舞しないと怒られるわよ」


「パパおこる?」


 パパは、舞がおもちゃをお仕舞し忘れて怒ったことがあるのだ。怒られたのは私。


「まい、おしまいする」


 舞もお仕舞する気分になってくれたようだ。


 そこで童話の出番だ。今年の童話は「白雪姫」童話を語りながらお仕舞をする。


 どういうことかと言うと⋯⋯

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