第24話 手本
長い食事が終わり、外出着に身を包んだハオランを見送った。少し離宮の外をぶらりとするらしい。
「行ってらっしゃいませ」
ユーシェンが頭を下げると、かがんで顔を近づけてきた。縦の瞳孔が、愉悦に細められている。
「そなたに愛しい夫との別れを惜しませてやろう」
唇を暗に示されて、ユーシェンは無念に目を閉じる。
本当に、堪忍してくれ。人がたくさんいるだろうが、俺側の!皆本当に、俺が子供のころからの仲なんだよ!
しかし、自分の言動ひとつに、彼らの命運がかかっている。ここでやらねば主ではない。なんの接吻ごとき。
頬に手を添え、うんと背伸びをした。そっとハオランの唇に、自分のそれをぶつける。はやくに目を閉じたから、位置がずれたかもしれぬが、まあ及第点だろう。目を開けて、唇を離す。
「お帰りをお待ちいたしております」
「ふふ」
後頭部に、手が回ったかと思えば、ぐっと引き寄せられる。唇を深く奪われて、ユーシェンは、瞠目した。周囲は、気の利いたことで、飲んだ息さえ、消そうと一生懸命やってくれた。
「んん……っ!」
よくいえば情熱的、悪く言えば執拗な接吻を二分ほど。ハオランは唇を離す際に、わざと一度吸って音を立てた。
「手本だ。覚えておけ」
そう言って、外に出て行った。ユーシェンはがくりとうなだれて、倒れ込んだ。
「ユーシェンさま……!」
「大事ない、ファンシン。大事ないぞ」
首を振り、ファンシンに応えながら、ユーシェンは怒りに震えていた。
ちっくしょう。あの野郎、男を弄びやがって……!
昨日「あんたの詩、感傷的すぎ」って言ったのを、根に持ってるに違いない。なんて女々しい奴。ユーシェンは、ハオランの不敵な笑顔を思い、歯噛みした。
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