理想の異世界生活を取り戻せ!〜チートスキルで調子に乗りすぎた俺は神の不興を買ってしまったんだが〜
ナガムラ京
愛を取り戻せ!
「ううん……」
白い床の上で、アルスは目覚めた。
「え……ここ、どこだ?」
先程まで宿屋のベッドで寝ていたはずだった。
隣で寝ていた美少女巨乳エルフもいなくなっている。
「うぅ寒っ…って、裸じゃねぇか!」
よく見るとアルスは全裸だった。
昨晩はお楽しみだったので、そのまま寝落ちしまっていたのだ。
状況がわからないまま、アルスは周囲を見渡した。
真っ白な天井、真っ白な床がどこまでも広がっている。
近くに置いてあったはずの服や装備は見当たらない。
アルスはこの場所に見覚えがあった。
「そうだ! ここは俺が異世界転生した時に来た場所じゃないか! ……はっくしょん!」
前世は冴えない隠キャおっさんだったアルスは、トラックに轢かれて死亡した。
だが気がついたらここにおり、神からチートスキル【剣聖】を付与され、
冒険者として異世界転生を果たしたのだった。
とりあえず全裸のままでは風邪を引いてしまうので、服を探して歩き出す。
しかし、どこまで歩いても、白い空間が続いているだけだった。
しばらく歩いていると。
「うわーーーー」
遠くで絹を引き裂くような悲鳴がした。
もしかして今のは昨晩のエルフかもしれない!
アルスは髪と股間を振り乱し、声のする方向へ走った。
しかしそこにいたのはエルフではなく、自分と同じくらいの年恰好の青年だった。
しかも同じく全裸だった。
「うわああああ、なんだお前!?」
アルスは思わず叫んだ。
向こうもこちらに気がつく。
「うわああああああ露出狂野郎だああああああ!」
「それはお前もだろ!!」
一悶着あった後、とりあえず落ち着いて話をすることにした。
「……さきほどは取り乱して悪かった。俺様の名はアレス。貴族の息子で魔法使いをしている。昨日は俺が引き取った元奴隷の爆乳メイドと寝ていたはずなんだが、起きたら何故かここにいた」
「お前もか……俺の名はアルス、よろしくな。ていうか似たような名前でわかりにくいな」
「ややこしいな……先程ここの調査しようと解析魔法を発動させたんだが、何も起こらなかった。こんなことは転生後初めてだ」
「ちょっと待て。もしかして、お前も異世界転生者か?」
「そういうお前も?」
アレスは元ブラック企業のサラリーマンで、前世は過労で死んでしまったらしい。
気がついたら神からチートスキル【全属性魔法(詠唱無しLv.99)】を付与され、貴族の息子として生まれ変わったのだという。
「俺たちなんだか似たような境遇だな。名前もどことなく似ているし」
「もう名前のことはいいよ!それよりも、早く服を探さないか。凍え死にそうだ」
「そうだな。ここではどうやらチートスキルも使えないようだし。せめて火の魔法が使えればな……」
二人は同時にやれやれと呟いた。
アルスとアレス。フル●ンの男が並んで歩く。
しかし、行けども行けども何もなかった。
――――十らしたアルスは叫んだ。
「ああああああああもおおおおおんんん!なんなんだよこの空間は!」
「落ち着けアルス!まだ十分しか経っていないぞ。こっちまで余計にイライラするだろうが!」
「こんなもん冷静でいられるかってんだ!あああああああああ!お願いします神様、仏様、駄女神様!贅沢は言いませんから、どうか服だけでも恵んでください!」
「ちょっと待てアルス。今、神と言ったか?」
「それがどうした!」
「前にここで会ったなら、もしかしてここにいるんじゃないか?その神が」
「―――!?……そうか! お前冴えてるなアレス!」
「ちょっと叫んでみようぜ」
そう言うと、2人は虚空に向かって叫んだ。
「おおおおおおい!神様ああああああああ!」
「ここはどこなんだああああああ!早く異世界に戻してくれええええええええ!」
「っていうかとりあえず服くれえええええええええええ!」
何もない空間に、虚しく声だけが響いた。
「ダメか…!」
2人が絶望していると、何もなかったはずの空間に、突然ドアが現れた。
ガチャリとドアが開く。
「うるせえええええボケどもがあああああああああああああ!!!」
いきなり中からヒゲの老人が現れた。
「あっ!! あんたはあの時の神様!!!」
「とりあえず服よこせ!!」
アルスとアレスは限界だった。
寒さのせいで二人の股間は完全に縮こまってしまっていた。
ボロ布を渡された二人は、股間だけ隠した状態で正座させられていた。
「まったく……お前たちをここへ呼んだのは他でもない。実は今お前たちの暮らしている異世界を作ったのはワシでな。その管理もワシがしとるんじゃが……お前たち随分好き勝手やっとるようじゃのう」
「だって、【剣聖】になってチートスキル【無双乱舞】を使えばドラゴンもデーモンも一撃だし、ギルドでSSSランク冒険者になって世界最強だし、受付嬢やパーティの女は俺にメロメロだしおっぱいでっかいし。あー異世界生活最高って感じ」
「俺様も貴族の息子になって入学試験は目立ちたくないのに詠唱なし高ランク火力魔法でむかつく金髪貴族ぶっ飛ばして初日から注目の的だし、今では身寄りのない元奴隷を貴族権限で買い取ってメイドにしてハーレム最高だし」
「だああああああああああクソがああああああああああああ!!!!!」
神はとうとうキレた。
「ワシはそんなことのためにお前たちを異世界転生させたんじゃねえええええええ!ちょっと死に方が不憫だったかなって情けをかけたら好き勝手しやがって! お前らのせいで世界の生態系が乱れるんじゃ、ちょっとは自重しろ! 管理するワシの立場も考えろ!」
「えー、そんなこと言われても今の生活気に入ってるし〜」
「そうそう、鼻クソほじるより人生イージーモードだし〜」
話に飽きたのか、二人の態度はだんだん無礼になっていた。
「だから早く異世界に戻してくれよジジイ」
「ジ、ジジイ!?」
「そーそー、俺は早く元奴隷メイドとS◯Xの続きがしたい!!」
神は怒りのあまりプルプルと震えている。
「うぐぐぐ……お前たち、随分ワシと人生を舐めているようじゃのう…よいか? お前たちに能力を与えたのはワシじゃ。つまりお前たちの生殺与奪の権はワシが握っておるのじゃぞ。このままチートスキルを取り上げてやっても良いのじゃがな~」
神がそう言った途端、アルスとアレスは急に土下座をした。
「舐めたクチ聞いてすみませんでした神様!!」
「これからは心を入れ替えて真面目に生きます!! 靴も舐めます!」
先ほどまで踏ん反り返っていた二人に、もはやプライドは無くなっていた。
「フン、口ではどうとでも言えるわい。よってワシはお前たちに試練を与えることにした」
神が右手を挙げると、天井にゲートが現れる。
「今からお前たちを異世界闘技場送りとする!!」
「「異世界闘技場!?それは一体何なのですか!?」」
「そこには異世界転生後、お前らみたいな調子に乗った冒険者やら貴族やら、やれやれ俺は目立ちたくないし女に興味ないんだがな、みたいな雰囲気の奴らが集められておる! 当然チートスキルも持っておる! お前たちはその者たちと闘い、みごと勝ち残ったら元の異世界に返してやろう。ちなみに負けたら元の世界に戻すことにする。また冴えないサラリーマン生活に逆戻りじゃのう」
「「そ、そんな〜〜〜」」
アレスとアルスは絶望した。
「うるせええええええええ!! てめぇらに選択肢があるわけねぇだろ!!さっさと行け!!」
神が杖を振ると、2人の体が浮き上がった。
異世界へのゲートが掃除機のように二人を吸い込み始めた。
「では、行ってくるのじゃ」
「「いやだあああああああああああ努力なんてしたくないいいいいいいいい」」
訴えも虚しく、アルスとアレスはゲートに吸い込まれていった。
股間を隠していたボロ布だけがヒラヒラと落ちてくる。
「さて、うるさい奴らもいなくなった。ワシも見物に行くとするかのう」
2人の物語の続きは、まぁ反響があれば書くことにする。
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