「ひなまつりの勝負」
mynameis愛
「ひなまつりの勝負」
「おい、哲也。お前、今年のひなあられ対決どうする?」
昼休み、貢祐がノートを閉じながら言った。
「は? ひなあられ対決?」
「そう。毎年、誰が一番おいしいひなあられを持ってくるかで勝負するじゃん。」
哲也は腕を組んで考えた。勝負ごととなれば、手を抜くつもりはなかった。
「今年も俺が勝つに決まってる。」
「へぇ、言うじゃない。」
声の主は美穂子。彼女は冷静でかつ、自分を高めるために努力するタイプだった。
「私は今年、デパ地下で買った高級ひなあられを持ってくるわ。去年みたいに安物じゃないわよ。」
「は? 高級って値段勝負かよ。」
「おいおい、楽しくやろうぜ。」
貢祐は今を楽しむことを重視する性格だから、勝負とはいえピリピリするのは避けたかった。
「それより、茉莉紗は?」
視線を向けると、茉莉紗はのんびりとスマホを眺めていた。
「んー? ああ、ひなあられね。買うの忘れたから、誰かちょうだい。」
去年も同じようなことを言って、誰かのひなあられをもらっていた。
「相変わらずだな……。」
哲也はため息をついた。
翌日、ひなまつり当日。
昼休み、みんながそれぞれ持ってきたひなあられを見せ合う。
美穂子はキラキラと輝くパッケージの高級ひなあられを取り出した。
「どう? 最高級の国産もち米使用、特製メープル風味のひなあられよ。」
「お、おいしそう……。」
貢祐は自分の袋を出す。
「俺は昔ながらのカラフルなひなあられ! これぞ伝統って感じだろ!」
「僕は、手作りしてきた。」
哲也は自信満々に手作りのひなあられを差し出した。組織的な計画のもと、完璧なレシピで作った自信作だ。
「すごい……!」
「やるじゃん、哲也。」
そして、茉莉紗は……。
「私はこれ!」
彼女が出したのは、コンビニで適当に買ったひなあられ。
「なんだそれ!」
「だって買いに行くの面倒だったんだもん。」
結局、どのひなあられが一番おいしいか、みんなで食べ比べをすることになった。
「……やっぱり、どれもおいしいな!」
貢祐が笑い、美穂子も小さく頷いた。
「ま、悪くないわね。」
哲也は少しだけ悔しかったが、なんとなく楽しくなっていた。
ひなまつりの勝負は、結局「みんなで楽しむことが一番」という結果に終わったのだった。
「ひなまつりの勝負」 mynameis愛 @mynameisai
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