蜘蛛女
「あ……あ……ユウキ君……⁉」
目の前でユウキが女に痛めつけられる様子を見て、真琴は恐怖で動けなくなっていた。
助けなきゃと頭で思っていても、身体を動かすことができない。
「……真琴ちゃん……逃げて……」
地面に倒れたユウキが真琴に向かって、必死の形相で逃げるように促すが、既に真琴は逃げるチャンスも失っていた。
「へえ……こいつはお前の女か? だったら尚更可愛がってやらねえとなあ!」
真琴を見た女の目が赤く光り、その身体が変容を始める。
額に六つの目が浮かび上がり、元の目と合わせて八つの赤い目が現われる。
ドレッドヘアーが肥大化して蜘蛛の脚のような形状へと変化し、口元から牙が飛び出して、肌も黒く、硬く変化していく。
ボンテージからも棘が飛び出し、黒光りする硬質な肌に変わるまで、わずか一瞬だった。
「な……なにこれ……⁉」
女は数秒で蜘蛛女とも言うべき、異形の姿へ変貌を遂げる。
そのおどろおどろしい姿に真琴は腰を抜かし、尻もちをついてしまう。
「へへへ……いい顔してんなあ……こうやって泣き叫ぶオモチャで遊ぶのが最高なんだよ……へへへ……」
「い、いや……来ないで……!」
真琴は歯をガチガチと震わせ、大きな瞳から恐怖の涙を流すが、身体が震えて力が入らず、もはや逃げ出すことなどできなかった。
「真琴ちゃん……!」
ユウキは歯を食いしばり、立ち上がる。
身体が軋むように痛むが、今はそんな痛みなどどうでもいい。
「真琴ちゃんから、離れろ!」
真琴に近づこうとする蜘蛛女に向かって、ユウキは叫んだ。
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