ゲロ以下うんこ未満

イカクラゲ

ゲロ以下うんこ未満


「姫野さん、僕と付き合ってください」


 ──放課後。

 僕は勇気を出して、姫野さんに告白した。


「ごめんね。君とは付き合えない」


 それが、彼女の答えだった。


 見事な玉砕だった。

 やっぱり僕では、高嶺の花の姫野さんには取るに足らない存在だったのだろうか。


「やっぱり……僕は姫野さんにとって、友達以上恋人未満なのかな」


 姫野さんは首を振った。


「違うの。君は私にとって……」


 続く言葉に、耳を疑った。



「……ゲロ以下うんこ未満だから」


「待って」


 清楚と名高く、高嶺の花たる姫野さんの口から、吐瀉物と排泄物が同時に飛び出したことに驚いたが、それよりも……



「僕が、ゲロ以上うんこ未満?」


 聞き間違いかと思い、聞き返した。


「ゲロ『以下』よ」


 返事は、もっとヒドかった。


「待って、ヒドくない?」

「これでも譲歩した」

「僕は姫野さんにとって、うんこ以下なの?」

「以下じゃない。未満よ。以下だとうんこも含まれるもの」

「僕は排泄物より下等な存在なの?」

「うん」

「いくらなんでも、うんこはあんまりじゃない?」

「じゃあ、道端に吐き捨てられた痰?」

「道端に吐き捨てられた痰!?」

「痰といっても、ただの痰じゃなくて、喫煙者がカーッてした粘り気のある方のクソ汚いやつで」

「実演しないでよ!!」


 眩暈がした。

 まさか友達と思われていないどころか、姫野さんにゲロだのうんこだの痰だと思われていたなんて。



「ヒドいよ姫野さん。僕は姫野さんのこと、大好きなのに……」


 打ちひしがれる僕に、姫野さんは容赦なく睨みつけ、


「だって、君は──」


 スマホを取り出し、『110』と入力し、告げた。




「──学校に不法侵入した48歳の全裸の無職のおっさんなんだもの」




 こうして、僕は逮捕された。

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ゲロ以下うんこ未満 イカクラゲ @akanechankonabe

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