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第8話

「起こしちゃったかな」

「起きてました」

「疲れてるんだよ。寝たほうがいい」

「おじさん」

「ん」

「私、おじさんと話がしたいんです」

私は正座をして、体をおじさんの方に向けた。

「璃子ちゃん」

「いいですか」

おじさんと私の目が合った。

私は息を吸い込んだ。

「私、おじさんのことが好きなんです」

おじさんはベッドの上で、私と同じように正座をして向き合った。

「気持ち伝えたかったんです。大学が始まる前に。おじさんとお別れする前に」

おじさんは真面目な顔をして聞いていた。

「おじさん。私のことフッてください」

「…」

「おじさんに好きな人いるの知ってます。私の片想いなのもわかってます。こんな気持ちで大学生活送るの、嫌だから」

「うん」

「だから、私にとどめさしてください」

おじさんは、少しだけ微笑んでから、こう言った。

「璃子ちゃん、君はお母さんにそっくりだよ」

「やめてください。私は私。母は母です」

「…」

「大丈夫ですから。早く」

「…」

「ケジメなんです。私の」

「璃子ちゃん」

「はい」

「なんて言えばいいのか、わからないけど」

「はい」

「もしね、もし僕が20歳若かったら、君に告白していたと思うよ」

「…」

「本当にそう思う。君のこと―」

「待ってください」

「…」

「どうしてそんなこと言うんですか。どうして、どうしてそんな嘘つくんですか⁉」

「嘘じゃないさ」

「嘘! 嘘です‼ だって…、おじさんは、お母さんに告白したんですか⁉」

「…」

「してないですよね⁉ 私とお母さん似てるんでしょ⁉ でも気持ち伝えたことなんて一度もないじゃないですか‼」

「…」

「おじさん、ずーっとそうやってごまかしてる。ちゃんと伝えないで、嘘ついて…。ずるいです、おじさんは」

「…」

「いっつもそうやって、ひとりでいるんだもん…」

「ごめんよ。璃子ちゃん」

私はおじさんに謝られて、猛烈に恥ずかしくなった。

私はパジャマのまま、部屋を飛び出していた。

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