変わらない景色
SINKA(きよのしんか)
手紙
いつの日からか、気がついたつもりになっていた。
コンビニの奥にある、フェンスの前に座り込みながら。
慌ただしく過ぎて行く景色から、自分が取り残されている気がした。
そこにいるはずなのに、誰も自分を見ていない感覚。
自分がどうなるかなんて、考える事も無かった。
そんな日々から、強引に引っ張り出してくれた手を、今でも鮮明に覚えている。
それは、何気ない変化だったのかもしれない。
でも、霞ががった世界を、切り裂いてくれた瞬間だった。
大げさかもしれないけれど、世界の色が変わったんだ。
思い出せば、わずかな時間だった。
それでも、あの頃の感覚は今でも心地よく頭の中に刻まれている。
でも、そんな微かな輝きは、いとも簡単に淀んだ闇が覆いつくした。
あれから多くの時間が過ぎても、胸を突き刺すような痛みは消える事はない。
後悔という言葉さえ、軽く思えてしまう。
それが、意味を持たない事が分かっていても、繰り返し考え続けてしまう。
でも、そのたびに深い深い闇が世界を覆いつくす。
変わる事のない過去と、見つかる事のない答えを求めてしまう。
そして、またあの場所に足を運んでしまう。
君は、僕の世界を変えてくれたこの場所に、最後に立ち寄ったのだろうか。
またあの場所に座っていたら、君の手が目の前に現れてくれるような気がしてしまう。
いくつになっても、この場所に来ると、自分だけが取り残されているような気がする。
変わった事と言えば、ガラスに写る姿がおっさんになった事。
金髪にして、覚えたての煙草をくわえながら、世界を分かったようなガキも、気がつけばどこにでもいるおっさんだ。
何かになりたいなんて、そう言えば思った事なんてなかった。
ちょっとだけ、君の前でかっこつけたかっただけなんだ。
僕は小さい頃から、花火が嫌いなんだ。
でも、花火を見上げながら嬉しそうにしてる横顔が好きだった。
だから花火を見ると今でも、花火に嫉妬するんだ。
だから、今でも花火が嫌いなんだ。
最後の扉を閉めた帰り道、電車の中から見えた花火が綺麗だった。
花火見えてるか?
綺麗だね。
あの花火が綺麗だったから、あの時の自分が大嫌いだ。
今でも、正解なんてわからない。
未来なんてかっこいいものじゃないけれど。
気がついたら、あの頃から見たら未来に生きてる。
自分の見える世界、すべてが憎かった。
自分だけが、不幸なつもりだった。
でも、自分から見える世界が闇に包まれてるなんて、思い過ごしだったよ。
良い事も、悪い事も、たくさんあった。
でも、多くの人達に助けられて、心から笑える日々が未来にあったんだ。
絶望しかないと思っていた未来は、そんなに悪くなかったよ。
だから思うんだ。
君に未来があるのなら、後悔して欲しいんだ。
だから、やりたい事をやるんだ。
誰よりも、笑っていたいんだ。
あの時に何が出来たのか、その答えは今も分からない。
でも、これは俺が選んだ答えのひとつ。
だから、どんなに批判されようと、俺は言うよ。
君の答えは、間違っていたと。
それを、証明したいんだ。
これはエゴかもしれないけれど、君が少しでも心配してくれているなら、こう伝えたい。
俺は、幸せにやってるよ。
そして、あのコンビニは今も、あの場所にあるよ。
今も、つらい出来事は訪れるけれど、俺は教えてもらったんだ。
だから、あの時立ち上がったように、何度でも立ち上がれるよ。
また会いたくて
今でも思うけれど、きっとまた会えたら、今なら笑顔で会えるはず。
君の過ごした短い時間の中で、俺は何かを残せただろうか。
それはきっと、いつまでも答えは出ないだろう。
だけど、俺は言えます、心より幸せですと。
それはきっと、あの時に僕の手を救い出してくれたから。
もしもまた会えたなら、笑える話をたくさん持っていくよ。
ありがとう。
また会いましょう
変わらない景色 SINKA(きよのしんか) @bfsinka
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