共感覚と私
ゆぐ
共感覚と私
「私、共感覚なんです」と言うと、大抵の人間は、あからさまに疑問符を浮かべ、決まり切ったかのように「なに?」と答える。
共感覚という言葉を知ったのはつい最近のことで、YouTubeのおすすめで流れてきた動画がきっかけだった。サムネを見た瞬間、衝撃が走ったのを今でも覚えてる。動画を見終わって、胸が熱くなった。自分と同じ人間がこの世には存在するのだ、と。そこから、共感覚について調べまくった。興味が湧いたものには、とことん調べなきゃ気がすまない。見事にハマってしまった。
そもそも、共感覚とは何か。ある1つの刺激に対して、通常の感覚だけでなく 異なる種類の感覚も自動的に生じる知覚現象のこと。文字や数字、音、味や匂いに、色や形を感じたりすること。例えば、『4』という数字を見たとき、大抵の人間は、ただの数字の4だという。しかし、共感覚を通してみると、色は白く、角がシュッと尖っているように見えるのだ(個人の感覚です。人それぞれ違って感じます)。他に、痛み、何かを味わうと手に形を感じるや、月日に色を感じるなどもある。
共感覚のメリットとしては、記憶力がいいことと書いてあったが、確かに、他の人より小さいことを覚えていることが多いが、単純に記憶力がいいだけかもしれない。デメリットとしては、日常生活で意図しない色の刺激が視覚に入り込み、集中力が妨げられるや、雑音や騒音が多い環境では過剰な感覚刺激を受けてしまい、ストレスや疲労が蓄積する可能性がある。特定の作業に集中しずらく、混乱が生じやすいなどが挙げられる。まあ、雑音や騒音で、ストレスや疲労が蓄積されるのは、誰でもあるのでは? と思う。複数の共感覚を持つ人もいれば、1種類しか持たない人もいるらしい。共感覚には多様なタイプがあり、これまでに150種類以上の共感覚が確認されている。正直、周りに共感覚を持っている人間がいないから、そんなにあることも知らなかった。
そんな150種類以上のタイプがある中で、私は、文字にも、数字にも、音にも、味にも、匂いにも色や形を感じるが、それよりも、人間にその感覚が働きやすいのだ。その人の性格なのか、オーラなのかは定かではないが、その人から発せられるものに、私の琴線が触れ、共感覚が作動しているのかもしれない。実際のところ、自分で言うのもなんだが、ものすごく洞察力があり、それが総合的に脳がその人として判断をしているのかもしれない。正直、どういう理屈で、色や形を感じるのかは、理解していない。基本的に会って数分経ったら、色と形ができあがっているのだから。
まあ、共感覚が特にこれと言って、日常的に役立つかと言われれば、なんとも言えないが、唯一、私の共感覚が本領を発揮するのは、会話だ。対人とリアルタイムで話すときに、その人の感情のの揺れ動きを判断できる。いま嘘ついたなとか、話切り上げたそうだなとか。大きなものから些細なものまで、感知できる。ただ単純に直感力が高いだけなのもしれないが、微妙な変化をキャッチするのに良い判断材料になる。だからといって、百発百中で当たるわけではないのだが、今の相手の心境を相手に伝えると、大体の相手は驚いて、赤面する。
この能力のことを、もっと前から知りたかった。自分にとっては普通なことでも、相手にとっては普通ではない。何を言っているのかと、不思議がられる。だから、そのことは隠して、普通の人間でいようとした。気づいていないふりをしていた。でも今は違う。この能力をどう活かそうと模索している。今、小説を書いているのも、その過程なのかもしれない。
─完─
共感覚と私 ゆぐ @i_my
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