第8話

美紀、秀雄、瑠海そして高橋は立ち尽くしていた。

大袈裟な言い方かもしれないが、期待していた食べ物が食べられなかったショックは、四人にとってもかなり大きい。そう、ラーメン屋が臨時休業らしく、中は明かりが点いていないのだ。


「え~、がっかり。ラーメンが食べたかったのに。」

美紀がうなだれている。瑠海と高橋もがっかりはしているが、一緒に歩けている楽しさの方が上回っている様子だ。


秀雄は明かりの点いていない店をジッと見ている。


「この間見たのと同じ…。」

秀雄は美紀にご馳走してもらって、店を出た時のことを思い出していた。“臨時休業”の張り紙までもが、あの日に見えたのとそっくりなのだ。


「秀雄、どうしたの?見つめたってお店は開かないよ~!また今度でいいや、帰ろ~!」

美紀は言うが早いか回れ右をして、瑠海と高橋の肩をポンと叩いた。


秀雄は帰り際にもう1度振り返って確認している。


「やっぱり同じだよ…。」



4人はいつもの交差点で別れることにした。


「お2人さ~ん、またね~!」

瑠海が先に言った。


「はいよ~!2人とも仲良くね~。」

美紀が負けじと大声を出す。

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