たすけてが聞こえた。

「あたしいなくなるの――」

欠陥アンドロイドはこの夏、内緒でお別れなのです。
そう言って女の子はさみしげに笑った。

どうにもできず、どうにかしたくて、どうしようもない夜に、二人は手を取り逃げ出した――。

たどり着いたのは浜辺。苦悩が横たわる街道を抜け、葛藤が幅利かせる町からはるばるチャリで二人。

『たすけて』って聞こえてた。ずっと。どこか遠く、すぐそばから。

はて、あの声は誰の声――。

月を映した波が引き取った、どうしようもない困りごとは黒に溶けて、そしてやっぱり日は昇る。

素敵なお話です。

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