第11話

私が名前を言うと、サツキ先輩は驚いたようにそう口にする。


蓮先輩にいたってはピクリと反応し、しばらく黙るとゆっくり私に近づいてきた。




「えっ、」




ずいずいと近づいてきた蓮先輩に、私は思いきり後退りしてついには廊下の窓際に追いやられる。


じーっとその眼に見つめられ、ここで赤面しない女の子はいないと思う。




「ちょっ、あの、」




バンッと私の顔の横に手を付け、顔がグイッと近づいてきた。


キスされる!私が思わずそう思ったのと同じように、噂話してた女の子たちからも小さな悲鳴があがる。




「お前・・・」




だけどキスなんてされることはなく、その顔は至近距離で止まった。


至近距離にあるイケメンの顔面に、私の顔はゆでダコ状態。


間近に狭る蓮先輩が静かに口を開く。




「・・・名前、なんて言った?」


「・・へ?」




大袈裟にドキドキした割には拍子抜けな質問に私はまぬけな声を出してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る