第6話 新たな商品

 翌日に食料を買う為に商店に訪れるとその中で数人の参加者が騒いでいたので近寄て行く。

 その原因は昨日は決して無かったはずの書籍が売られていて、その中に魔法入門書が売られていたからだ。


 価格は1万とかなりお高いが、それでもそこにいた者達は直ぐに購入したが俺は同じカードの並びに合った者達が魔法を使えるようになってから購入しようと考えてその場からそっと離れる事にする。


 話し合いまで時間があるので頭の中にあるこの集落の配置と同じなのか確認する為に歩いているとやはり俺はこの中の事をちゃんと理解していた。


 この集落は広場を中心にコの字に家が並んでいて左端から価格が高い家となっている。商店はコの字型の中央にあり、その裏手には地下へと続くシェルターがあるのだが今は中に入るお金を持っていないし、入れたとしても価格が変動してしまうのでその時が来るまで勝手に入らない方が良いだろう。


 そしてコの字型の空いている先には広い道が伸びていて両側には高い木が並んでいる。その先には見張り台と門があるのだがかなり離れているのでその門は小さく見えていた。


 門だけなんだよな、壁も無いのにどうして門だけがあそこにあるのか謎だ。


 この集落の周りは森で囲まれているのだが虫の一匹もこの中では見かけないので、何かしらが作用している様に思えるが、何故かその中に足を踏み入れる気にはなれなかった。それは俺だけでなく誰一人として確かめようとしない。


 時間になると広場に集合し、リクが魔法入門書の話をすると東が読ませてくれと頼んだが内藤はそれを止めて不公平が生まれないように1人1冊購入する事が決まり、仕方がなく俺も購入する羽目になってしまう。


 だがその本を見ながら何度もチャレンジするのだがその翌日になっても誰一人として魔法を使える者は現れないのでこの場の雰囲気が悪くなり始めた頃、【足】のカードを持つ菅野さんが魔法とは関係なく空中を2歩だけ歩けるようになる。


 そして最初の襲撃が来るであろう前日に広場で集まっていると、遠くに見える門が開き、そこからアキトがフラフラと中に入って来た。


 それを見た東は汚い物を見る様な視線を送りながらボソッと呟く。


「見かけないと思ったら外に行っていたのか、だったら戻って来なくていいのに」


 誰もがアキトの事を気にしていなかったことに違和感を覚えていると、内山さんが鼻を擦りながら怪訝な表情で言い出す。


「えっ何だろこの匂いは……恐怖? 痛み? 何を言っているんだろ私って」


 そう言えば彼女のカードは【鼻】だよな、もしかして能力が現れ始めたのか?


 俺は声に出さずに考えながらアキトに視線を向けていると、アキトはその場に倒れてしまう。すると少し離れた所にいた白石さんが勢いよく立ち上がる。


「もしかして怪我をしているんじゃないのかしら? 私、見てきます」


 そのまま走り出すとリクも走り出し、内藤に肩を叩かれた俺も一緒になって2人を追いかけた。


 18歳で体格のいいリクは1番最初にアキトの元に辿り着くと焦ったように大声を上げた。


「早く来てっ、僕じゃどうにも出来ない」


 その次に到着すると、アキトは青白い顔でうめき声をあげ、苦しんでいる様に見えたが何も出来ずに見る事しか出来なかった。


「右腕が……」


 アキトの右腕は肘から先が無くなっているし服は血にまみれているので俺には何をしたらいいのか判断がつかない。


「化け物が門の外に……」


 急いで門に視線を向けるが門は固く閉じられているが得体の知れない恐怖を感じていると内藤がこの場に到着した。


「これは酷いな……」


 内藤もアキトの怪我を見て絶句をしていると息を切らした白石さんが最後にやって来る。


「見ているだけなら離れて下さい。邪魔です」


 普段は大人しい白石さんだったがアキトの傷口を見た途端にアキトのベルトを外して上腕部を強く縛り始め、脈や息を確認し始めている。


 それを見ていたリクは内藤に向かって言い出す。


「どうしたらいいんですか、そうだっ商店に回復薬って書かれた瓶がありましたよね、それを使えば良いんじゃないですか、僕ちょっと行ってきます」


 直ぐに走り出そうとしたが内藤は声を張り上げて引き留めた。


「よすんだ。そんな事をそんな事をしたら君がペナルティを受けるかも知れないぞ、それでも良いなら買ってくるんだね」

「……それはちょっと」


 その会話を聞いている内に段々と腹が立ってきて無言のまま走り出そうとすると白石さんが驚いたように呟いた。


「えっ何で……」


 その言葉で2人を見ると、アキトが光に包まれていてその身体に白石さんが手を置いている。直ぐにその光が治まるとアキトの顔色が良くなり、それまで右腕から流れてた血が止まっていた。


 その様子を見ていたリクが興奮したように声を出した。


「凄いよ、白石さんは回復魔法が使えるんだね」


 回復魔法だって? 白石さんのカードは【日】だろ、意味が分からないじゃないか。

  

 


  

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