第16話
◯東京・渋谷(夜)
スクランブル交差点を行きかう人々
スマホを見せ合い笑いあう女子高生
ビルの電光掲示板に流れるバラエティー番組。
TV「20年前、突然解散を発表して芸能界から姿を消した『スターナイトムーン』。なぜ彼女たちは解散することになったのでしょうか。」
『スターナイトムーン』の広告チラシが道端に落ちている、過去の映像。
ビルの広告で笑顔の向井七星と横山葉月、過去の映像。
◯七星の部屋(夜)実家
昔のアイドルのポスターが壁にはってある
テレビの明かりが部屋を照らす
二人に馴染みのあるmcがテレビの中で話す。
Mc「人気アイドルユニット『スターナイトムーン』突然の解散から約20年。その裏にあるこの20年間誰にも知らせることのなかった理由があきらk―。」
テレビを消す七星
部屋を出ていく。
◯田んぼ道
七『夜中に一人家を出る。月明かりに照らされた何もない田んぼ道』
◯バス停
七『その先にある古び、役割を終えたバス停。ここが私たちの“約束の場所”』
星空の下ポツンとたたずむバス停
年老いた葉月がバス停にやってくる。
七星、音楽を聴きながら待っている。
葉月、隣に座る。
葉「あれから僕たちは〜♪」
七「何かを信じてこれたかな〜♪」
葉「夜空ノムコウ。懐かしい。」
七「あの頃はさ、おっきいCDプレーヤー持ち歩いてさ。」
葉「そうそう、いつもこの曲聞いてたよね。」
七「懐かしいな〜。この曲聞くといつも思い出す。」
×××フラッシュ×××
葉「うそうそ。いいじゃん。『スターナイトムーン』やろうよ、二人で。日本一のアイドル目指してさ。」
七「本当?!じゃあ約束。絶対なろうね‼」
指きりする。
葉「うん!約束。」
×××××××
葉「七星はもうアイドルはやらないの?」
七「うーん、今はまだそんな気にはなれないや。」
葉「そっかぁ…。私、七星の歌大好きだよ。だから、また七星がアイドルやってるところ見たいな〜。私、七星のファン第一号だから。」
照れて笑う七星。
七「私だって葉月の大大大ファンだよ。」
葉「もうこんなんだけど…。」
しわくちゃになった手を見つめる葉月。
葉月の手に自分の手を重ねる、七星。
二人、顔を合わせ笑う。
男性がバス停の前を通る。
キーホルダーを落とす。
葉「あ、ちょっとまって‼︎」
男性止まる。
落ちていた『スターナイトムーン』のグッズのキーホルダーを拾う葉月。
×××フラッシュ×××
お母さんと手を繋ぎ握手の順番を待つ男の子。
カバンにはスターナイトムーンのグッズのキーホルダーがついている。
××××××
葉月、拾ったキーホルダーを男性に渡す。
男「あっ、ありがとうございます。」
首を振る葉月。
七「荷物、多いね。」
男「久々の里帰りなんです。」
七「そうなんだ。」
男「はい。しばらくこっちにいるので荷物多くなっちゃって。これ、ありがとうございました!」
去っていく男性。
葉「七星、気づかれなかったね。」
七「ほんと。あのグッズ持ってるってことはファンだったはずなのにね〜。」
二人笑う。
七「この場所は落ち着く。」
葉「そうだね。」
しばらくの沈黙
葉「ねぇ、七星。私が死んだ後、この病気のことを世間に公表して欲しい。同じ病気の人の力になれると思うから。きっとたくさん辛い思いをしてる人がいる。私みたいにそばで支えてくれる人がいない人だっている。そういう人がさ、私のこと知って“あぁ、明日も生きよう”って、“頑張ろう”って思ってくれたら私がアイドルになった意味がちゃんとあったんだなってわかるから。だから七星の口から公表してもらえないかな。」
七「やめてよ、そういう話。」
葉「お願い。」
七「…。うん、わかった。」
葉「あ、あとね。」
七「ん?」
暗いバス停、月明かりに照らされながら座る二人。
葉「私が死んだらアイドルに戻ってね。」
田んぼ道にぽつんとたたずむバス停。
七星にもたれ掛かって座る葉月。
だんだん消えていく。
雲で月が隠れる。
一人になる七星。
七『夜空に輝く星は儚く、きれいに見えるけど、月を失った夜空を照らすにはあまりに小さく無力な光だ。』
七『だけどその小さな光を人は見上げる。きっと星には不思議な力があるのだろう。だから人は皆、星を見上げ願うのだ。月が沈み、夜明けがくる。もう一度夢をみよう。小さな星の力を全部出し切って。月がまた登るまで、ステージの上で輝き続ける。』
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