第78話

「確かにそうすれば早い話だ。俺は自分の立場を失わなくて済むのだからな。それくらいの事は、わかっている……」

「じゃぁなぜッ」

「わかっていてもな……それだけは、どうしてもしたくないんだ」


 ハッキリと答える社長の表情からは先程までの疲労感はなく、どこか決意にも似た力強さがあった。

 その言葉の中には『辞めてでも守りたい』と、そんな風な意味合いでしか聞こえず鮫島は悔しさばかりが込み上げてくる。


「シバ社長は……変わってしまいましたね。以前の貴方はそんな事を言う方じゃなかった……」

「秘書のお前がそう言うなら、そうかもしれないな」

「私はッ! ずっと貴方様を慕ってきましたッ!貴方の事が好きで……大切に想うからッ」

「鮫島……」


 止めどなく溢れる涙で必死に想いを伝える彼女は、社長も今まで見た事ないくらい感情を表にしていた。

 そして初めて聞き、知った”自分に対する本気の愛情”


 予想外の告白に社長は何も答えられず目を丸くし驚いてしまい、それを見た鮫島も伝えてしまった事を悔いた。

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